マイスリー | 病院でもらった薬の値段TOP

マイスリー
(酒石酸ゾルピデム)

世の中いろんな薬がありますが、よく見てみると、同じメカニズムで作用する化合物には、似たような構造式の薬が多いです。これは、薬が特定のターゲットたんぱく質(受容体、酵素)に結合して作用を示すことに原因があります。受容体、酵素の作用部位と薬の関係は、「鍵と鍵穴」の関係と考えられるため、同じ作用部位に結合できる薬は必然的に形が似てきます。製薬会社は、自分の会社の新規化合物にいろんな特徴をつけようと工夫をいろいろ考えますが、似た化合物の中でぴかっと光る特徴を出すのは大変です。

 そこで、他の会社とは構造がまったく違う化合物を作ってみようというアイデアが出てきます。

 今回はその代表としてマイスリー(アステラス製薬、主成分酒石酸ゾルピデム、薬価 5mg= 49.6円)を取り上げます。もともとマイスリーは、抗不安薬の主役であるベンゾジアゼピン系化合物との差別化を目的として開発されました。ベンゾジアゼピン系化合物は、脳内のGABA受容体というたんぱく質の一部(ベンゾジアゼピン系化合物が結合する部位ということでベンゾジアゼピン受容体と呼ばれていました)に結合し、神経活動を抑制することで抗不安作用、睡眠誘発作用を示します。

 ゾルピデムは、ベンゾジアゼピン骨格を持ちませんが、ベンゾジアゼピン受容体に結合し、ベンゾジアゼピン化合物と同等の睡眠誘発作用を示します。ゾルピデム以前に、ベンゾジアゼピン受容体に結合する非ベンゾジアゼピン骨格の化合物はなかったので、ゾルピデムの登場は脚光を浴びました

 ゾルピデムことマイスリーは、ベンゾジアゼピン系化合物にくらべより自然な睡眠が得られ、ハングオーバーなどの副作用が少ないことが臨床試験で示されました。このハングオーバーという症状、私も体験したことがありますが、すごくしんどいです。これがないのは大きなメリットだと思います。また、ベンゾジアゼピン系化合物が有する抗不安作用はマイスリーでは弱く、これまでの薬剤と異なる挙動を示すことがわかりました。これらの特徴は、ゾルビデムの結合部位がこれまでのベンゾジアゼピン受容体とほんの少し異なることから生じると考えられ、この結合部位の名前は、ベンゾジアゼピン受容体という呼び方からω1受容体へと変更されました。

 マイスリー(ゾルピデム)のように、元になる化合物から大きく構造が異なる化合物は、「鍵と鍵穴」の「鍵」の形を大きく変えるわけですから簡単には見つかりません。しかし、近年ではランダムスクリーニングの方法が進化し、数十万個の化合物の生物活性ををロボットで一気に評価することが可能となりました。数十万個調べれば、一個くらいは毛色がかわった化合物が出てくるだろうということで、最近はこの手法が多用されるようになっています。今後は、他の領域でもマイスリーのような革新的な化合物が出てくると思われ、薬作り職人としては楽しみです。


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構造式

ゾルピデム


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