メリスロン(ベタヒスチンメシル酸塩)とはどんな薬?

メリスロン(メリスロン(エーザイ、主成分ベタヒスチンメシル酸塩)は、めまいの治療に用いられる薬です。メリスロンは、メニエール病という病気によって起こるめまいに対して用いられます。メリスロンは、40年ほど前から使われている歴史のある薬です。

メニエール病とは、激しいめまいの発作が周期的に起こる病気です。めまいは、体の平衡感覚(バランス感覚)が乱れることから起こります。この平衡感覚は、耳の中にある内耳という部分でコントロールされています。メリスロンは、この内耳の働きの乱れを抑えることで、めまいの症状を治める効果をしめします。

メリスロンの作用メカニズムを知るために、内耳の働きを簡単に見てみましょう。

内耳というのは、耳の奥、鼓膜よりさらに奥にある器官で、体のバランスを検出する働きをしています。内耳には、リンパ液という液体が入った入れ物があります。体を動かすと、この入れ物の中のリンパ液が動きます。この動きが神経に伝わって、体のバランスを検出します。

メニエール病の患者さんでは、内耳の血液の流れが悪くなっているので、内耳の働きが悪くなっています。そのため、体のバランスがうまく検出できず、平衡感覚が乱れて、めまいを起こすのです。

メリスロンは、内耳の血液の流れを改善する効果を持っています。メリスロンは、ヒスタミンという生体内物質と似た作用を示します。ヒスタミンは、血管を広げる働きを持っているのですが、メリスロンはこのヒスタミンと同様、内耳の血管を広げる効果を持ちます。メリスロンによって内耳の血管が広がると、内耳を流れる血液量が増えて、内耳の働きを回復することができます。

さて、メリスロンにはヒスタミンと似た効果があるのですが、メニエール病の治療には、メリスロンと反対の作用、つまりヒスタミンの作用を抑える薬(抗ヒスタミン剤)が使われることもあります。

代表的な薬はトラベルミン配合錠(エーザイ、主成分サリチル酸ジフェンヒドラミンなど)で、ジフェンヒドラミンという成分が抗ヒスタミン作用を持っています。脳の中のヒスタミンは、神経活動を活発にする働きをしているので、ジフェンヒドラミンがヒスタミンの働きを抑えると、神経活動が低下します。ジフェンヒドラミンは、脳の中の吐き気やめまいを感知する部分の神経活動を抑えることで、メニエール病のめまいの症状を抑えるのです。

メリスロンと正反対の作用を持つ薬でも、めまいという同じ症状を抑えることができるって、なんか不思議ですね。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


メリスロン(ベタヒスチンメシル酸塩)の構造式