レクタブル(ブデソニド)とはどんな薬? 効果がでるメカニズム

レクタブル(EAファーマ、主成分ブデソニド)は、軽度から中等度の潰瘍性大腸炎の治療薬です。

レクタブル注腸フォームは、主成分のブデソニドを含む泡(フォーム)にして、腸内に直接注入可能にした薬剤です。

ブデソニドは、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)の一種で、大腸内の免疫細胞の機能を強力に抑制して、潰瘍性大腸炎の症状改善効果を示します。

ステロイドの投与部位が腸内に限られ、ブデソニドは体内で速やかに分解されるので、レクタブルを使用することで、十分な効果を保ちつつ全身性の副作用を低くできます。

この記事では、レクタブルの効果が出るメカニズムや他の薬剤より使いやすい理由について説明します。

目次

レクタブルの効果が出るメカニズム

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜で免疫細胞が活性化し、激しい炎症を起こす病気です。

炎症が進むと粘膜が傷ついて潰瘍が生じ、出血による血便や激しい下痢が起こります。

症状が激しくなると、大腸からの出血で貧血になったり、栄養分の吸収が悪くなったりするため、薬剤によって腸の炎症を鎮める必要があります。

レクタブル注腸フォームは、肛門から大腸に抗炎症作用を持つ化合物を注入する注腸剤と呼ばれる薬剤で、大腸粘膜の免疫細胞に直接薬剤を届けることができます。

レクタブルの主成分であるブデソニドは、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)の一種で、免疫細胞の働きを低下させる効果を持ちます。

細胞内に入ったブデソニドは、グルココルチコイド受容体というタンパク質に結合して活性化し、遺伝子が働く場所である細胞核に受容体を移動させます。

ブデソニドが結合したグルココルチコイド受容体は、免疫細胞に関わる多くの遺伝子の働きを変え、炎症が鎮まる方向に免疫細胞を変化させます。

このようなメカニズムにより、レクタブルを使用することで、大腸粘膜の免疫細胞の活性化を止め、潰瘍性大腸炎の症状の改善効果が期待できます。

一般的にステロイドは免疫細胞以外の細胞の遺伝子機能も変化させるので、全身の臓器にいろいろな副作用が生じます(糖尿病、骨粗鬆症など)。

しかし、レクタブルの場合には、薬剤が大腸内に局所的に投与されるので、大腸以外の臓器にブデソニドが届きにくくなっています。

大腸から薬剤が吸収されたとしても、ブデソニドは肝臓で速やかに分解されるので、全身臓器に届くステロイドのりょうはわずかです。

このような理由で、レクタブル投与時はステロイドの抗炎症効果を保ちつつ、全身性副作用は出にくくなっています。


レクタブルが使いやすい理由

潰瘍性大腸炎の治療に用いられるステロイド注腸剤は複数種類ありますが、レクラブル注腸フォームはその中でも使いやすい薬剤です。

レクタブルの使いやすさは、立ったまま自然な姿勢で薬剤を注入できる点にあります。

一般的な注腸剤は、注入するために横たわる必要があり、大腸の奥に薬剤を届けるためには、体を回転させるなどの体位変換をしなくてはいけません。

体位変換を行う場合、一回の注腸を終えるには30分近くかかることもあり、毎日行うとなると患者さんの負担は大きいものでした。

レクタブルの場合は、薬剤を含んだ泡をスプレーのような器具(アプリケーター)を用いて腸内に吹き込みます。

薬剤が勢いよく大腸の奥まで吹き込まれるので、レクタブルの場合には、薬剤注入後に時間をかけて体位変換をしなくても問題はありません。

自然な姿勢で短時間で注腸できるというのは、患者さんの利便性を大幅に改善しました。毎日の服用についても、レクタブルであれば負担はだいぶ小さくなります。

投与するための道具(デバイス)を工夫することで、同じ薬剤でも使いやすさが一気に改善することがあります。

レクタブルを見ると、薬を作るという作業は、化合物を作るというだけではなく、ユーザーの使いやすい製品をつくるということを痛感します。

「レクタブル®の使用方法」(EAファーマサイトへのリンク) では、レクタブルの使用方法が動画で確認できます。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


ブデソニドの構造式