ハルシオン(ファイザー、主成分 トリアゾラム)は、作用が速やかに発現する睡眠導入剤で、不眠症の治療に用いられます。
また、手術前夜に、術前の不安による不眠を和らげるための睡眠薬としてハルシオンが処方されることもあります。
ハルシオンの主成分であるトリアゾラムは、神経活動を抑制するGABAA受容体の働きを強めて脳の活動を低下させ、眠気を引き起こしたり、不安を弱らげます。
トリアゾラムは体外へ速やかに排泄(はいせつ)され作用持続時間は短く、ハングオーバーと呼ばれる翌朝目覚めた後まで眠気が残る症状は出にくい睡眠薬です。
この記事では、ハルシオンの効果・副作用の作用機序(メカニズム)を解説します。
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目次
ハルシオンの主成分であるトリアゾラムは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と呼ばれるタイプの薬剤です。
ベンゾジアゼピン構造とは、化学構造式の6角形と7角形でできた環のことです。
ベンゾジアゼピン構造を持つ薬剤の多くは、睡眠導入薬や抗不安薬の効果を持ちます。
トリアゾラムを始めとするベンゾジアゼピン系睡眠薬は、脳の神経細胞表面にあるGABAA受容体に作用して効果を示します。
GABA(γアミノ酪酸)という神経伝達物質がGABA受容体に結合すると神経の電気的活動が減弱します。
GABAやベンゾジアゼピン系化合物の作用メカニズムについての参考記事:「ベンザリン(ニトラゼパム)とはどんな薬?」、「セルシン(ジアゼパム)とはどんな薬?」
トリアゾラムはGABAA受容体に結合し、GABAの作用を強めて、脳の電気活動を低下させます。
その結果、ハルシオンを服用すると、眠気が起こったり不安が和らいだり、という効果が現れるのです。
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ハルシオンは、睡眠薬の一般的な副作用である、服用翌日の不快感(二日酔い感;ハングオーバー)が起こりにくいとされています。
ハングオーバーは、翌朝まで体内に残った睡眠薬が眠気を起こしたり、脳の睡眠覚醒リズムが薬剤によって強制的に変更され、その反動で不快感が起こることで生じます。
ハルシオンの場合、トリアゾラムは体内から速やかに排泄され、服用8時間後には体内から消失します。
そのため、薬剤が明朝まで体内に残らないので、薬が残ることでのハングオーバーは起きにくい睡眠薬です。
ハルシオンは、作用持続時間が非常に短い超短時間型睡眠薬に分類され、特に眠りに入りにくい入眠障害の患者さんに速やかに眠りをもたらすための睡眠導入剤として使われます。
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ハルシオンの副作用は、めまいやふらつき、倦怠感、頭痛などが挙げられます。
めまいやふらつきは、運動機能をコントロールする神経の働きがトリアゾラムによって低下し、全身の筋肉の緊張が緩むことで起こります。
ハルシオン以外のベンゾジアゼピン系睡眠薬にも、めまいやふらつきは副作用として共通して認められます。
また、ハルシオン服用後、もうろう状態や夢遊病のような症状(この間の記憶はない)が起こることが報告されています。
これらの副作用を考え合わせると、ハルシオン服用後は、車の運転や危険な場所での作業は控えることが望ましいです。
さらに、ハルシオンはお酒と一緒に服用してはいけません。
トリアゾラムは神経活動を低下させますが、お酒に含まれるアルコールも脳に対し同じような効果を示します。
そのため、ハルシオンとお酒を一緒に飲むと、これらの効果が足しあわさって、必要以上に脳の機能が低下してしまい危険です。
ハルシオンに限らず、薬を服用する際に飲酒は厳禁です。
ハルシオンは、比較的使いやすい睡眠薬です。
しかし、それは医師や薬剤師の指導をきちんと守り、ハルシオンが持つ副作用とうまく付き合えた場合の話であることは忘れてはいけません。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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