プロペト(白色ワセリン)とは?普通のワセリンとの違いは「精製」にある

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プロペト(丸石製薬、主成分白色ワセリン)は、皮膚の表面をワセリンで覆って乾燥や刺激から守ることを目的とした「皮膚保護剤」です。プロペトのもう一つの大事な役割は、ほかの薬を混ぜ込んで軟膏を作るときの土台(基剤)です。目に使う眼軟膏の土台にも使われています。1955年に発売され、70年以上使われ続けています。

プロペトの主成分は、日本薬局方(国が定めた医薬品の品質の基準書)の基準に合った白色ワセリンです。ただ、ワセリンには、黄色ワセリン、白色ワセリン、プロペトなど、いくつもの種類があります。同じ「ワセリン」なのに、なぜでしょうか。違いを生んでいるのは、石油から取り出したワセリンの「精製」の度合い、つまり不純物をどこまで取り除くかの違いです。

この記事では、プロペトが皮膚を守る仕組みを紹介したあと、ワセリンの種類の違いと、プロペトが眼軟膏の土台に選ばれる理由を、薬を作る側の目線で紹介します。

プロペトが皮膚を守る仕組み

皮膚のいちばん外側には、体の中の水分が逃げないように、また体外からの異物や刺激が体内に入らないようにするための「バリア」の働きがあります。乾燥やかぶれ、湿疹などで皮膚が荒れて傷つくと、皮膚のバリア機能が弱くなり、皮膚の中から水分が逃げて乾燥が進んだり、弱い刺激でもかゆみが起きたりします。

プロペトの主成分である白色ワセリンは油の仲間なので、水をはじき、皮膚の表面に膜を作ります。この膜がふたの役目をして、皮膚から水分が蒸発するのを防ぎます。プロペトには保湿作用がありますが、それ自体が水分を与えるのではなく、皮膚が持っている水分を逃がさないことで乾燥を防ぐのです。あわせて、荒れた皮膚を外からの刺激や空気から守り、回復を助けます。プロペトは、皮膚にしみ込んで効く薬ではなく、体の中にもほとんど入りません。そのため、皮膚への刺激が少なく、赤ちゃんの皮膚などにも使われています。

プロペト以外の保湿薬には、水と結びつきやすい成分で角質(皮膚のいちばん外側の層)に水分を保つタイプ(ヘパリン類似物質のヒルドイドや、尿素のウレパールなど)もあり、プロペトとは働き方が違います。

黄色ワセリン・白色ワセリン・プロペトの違い

石油から取り出したばかりのワセリンには、炭化水素のほかに、さまざまな不純物が含まれています。この不純物が、ワセリンに色がつく原因や、皮膚への刺激の原因になります。また、光や空気に触れて変質し、黄ばむ原因にもなります。そこで、精製によって不純物を取り除きます。

  • 黄色ワセリン:精製したワセリン。日本薬局方にも載っている、薬の材料です。
  • 白色ワセリン:黄色ワセリンから、さらに色の原因となる成分を取り除いて(脱色して)、白くしたもの。
  • プロペト:日本薬局方の白色ワセリンの基準に合ったうえで、刺激の原因になる有機酸などの不純物が少なく、熱をかけて滅菌しても、ほとんど色が変わらないことが特徴です。

このほかに、市販品として、白色ワセリンをさらに精製したもの(プロペト ピュアベール)や、水素を反応させる方法(水素添加)でさらに精製したもの(サンホワイト)なども売られています。いずれも、メーカーは不純物を減らしたことを特徴としています。

同じワセリンでも、どこまで不純物を取り除くかによって、刺激の少なさや、熱・光に対する強さが変わります。精製の度合いが、使い道を決めているのです。

ワセリンは石油から生まれた

ワセリンの歴史は、1859年のアメリカにさかのぼります。化学者のロバート・チーズブロウは、ペンシルベニア州の油田を訪れたとき、作業員たちが、掘削の機械にこびりつくろう状のかすを、切り傷ややけどに塗っているのを見ました。チーズブロウはこのかすを持ち帰り、熱やろ過で精製して、きれいなゼリー状の物質を取り出しました。1872年には、その作り方で特許を取り、「ワセリン(Vaseline)」と名付けました。ドイツ語の水(Wasser)と、ギリシャ語の油(elaion)を組み合わせた名前だといわれています。

ワセリンは、石油から得られるさまざまな炭化水素(炭素と水素だけでできた化合物)が、たくさん混ざった混合物です。常温で固体のもの(パラフィン)と、液体のものが混ざり合っているため、半分固体半分液体のような、ねっとりとした状態になります。プロペトの場合、温めると38〜60℃で溶けて、透明な液体になります。

薬の土台(基剤)としてのプロペト

軟膏は、薬の成分を、土台となる成分(基剤)に練り込んで作ります。基剤は、薬の成分を皮膚の上にとどめ、ほどよく広げる役目をします。白色ワセリンは、軟膏の基剤として最もよく使われる材料の一つです。ワセリンのような油の仲間の基剤は、油脂性基剤と呼ばれます(ほかに、クリームのような乳剤性基剤や、水に溶ける水溶性基剤などがあります)。

ワセリンが基剤に向いているのは、炭化水素でできていて、ほかの物質と反応しにくいからです。植物の油や動物の脂は、空気に触れると酸化して傷みますが、ワセリンは酸化しにくく、長く保存できます。それでもプロペトには、念のため、ごく少量の酸化防止剤(ジブチルヒドロキシトルエン)が加えられています。

プロペトの特徴がいちばん生きるのが、目に使う眼軟膏の土台としての役割です。目は刺激にとても弱く、細菌が入ると大きな問題になるため、眼軟膏は無菌(菌がいない状態)で作ることが求められます。刺激の原因になる不純物が少なく、熱をかけて滅菌しても変色しにくいプロペトは、この条件に合っています。添付文書でも、眼科用の基剤としてちょうどよい硬さ(稠度)と粘り気を持つことが、特徴として挙げられています。

縁の下の力持ち

プロペト自体は、炎症を抑えたり、細菌を殺したりする成分を持っていません。それでも、皮膚を守る薬として、そして、さまざまな軟膏や眼軟膏を支える土台として、70年以上使われ続けています。石油の中から見つかった物質が、精製を重ねることで、目に使えるほどの品質になっているわけです。プロペトは、薬の世界の縁の下の力持ちです。これからもプロペトは、いぶし銀の魅力?(白色ですが)を持ち続けていくことでしょう。

注)プロペトでも、まれに接触皮膚炎(かぶれ)が起こることがあります。塗ったところが赤くなったり、かゆくなったりしたときは、使うのをやめて、医師や薬剤師に相談してください。

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[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。