ウレパール(大塚製薬、主成分尿素)は、皮膚表面の角質という部分が厚くなって固くなる角化症という状態を治療するための塗り薬です。角質が厚くなる大きな原因は、乾燥による皮膚の水分量の低下です。ウレパールの主成分である尿素は水分と結びつく性質があるので、皮膚に薬剤が染み込むと尿素と一緒に水分が補給され、肌にうるおいが戻って皮膚の状態が回復します。
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皮膚の表面は角質という組織で覆われています。角質は体外の異物を防御するためのバリアとして働いています。このバリア機能がストレスなどで弱まると、皮膚から水分が蒸発しやすくなります。すると、皮膚の乾燥を防ぐために、角質の細胞がどんどん増殖するので、皮膚が厚くなり固くなる「角化症」という状態になります。「乾燥肌で肌がカサカサ」というのは、このような状態です(角化症といいます)。
ウレパールの主成分である尿素は、もともとは尿に含まれる成分として発見された物質で、体内の有毒物質であるアンモニアを、生体反応で無害な形に変化させたものです。
食べ物の中のタンパク質が消化・分解されてできるアンモニアは、体にとって大変有害なものです。例えば、肝臓の働きが悪くなってアンモニアが除去されず脳の中に入ると、昏睡状態を起こしたり、死に至ることもあります。
そこで、ヒトは肝臓でアンモニアを尿素へと変換して体外へ排出させる、という仕組みをもっています。尿素は水と強く結合し水溶性が高いので、尿の成分として体外へと排出されます。ウレパールは、「尿素が水と馴染みやすい」という性質を利用しています。
尿素は薬としては非常に小さい分子で、細胞の間をすり抜けて皮膚の中に速やかに染み込みます。ウレパールのクリームの中には、水分を結合した尿素が入っているので、水分を持った尿素を効率よく乾燥した皮膚へ届けることができます。皮膚の水分量が増すことで皮膚は柔らかくなり、角質の増殖が緩やかになってしっかりとしたバリア機能を持つ皮膚を取り戻せるのです。
ウレパールという名前は、主成分の尿素(「ウレア」urea)と真珠(「パール」pearl)を組み合わせて命名されたそうです。薬剤を皮膚に塗ることで、乾燥肌が水分を取り戻してつるつるになり、真珠のような輝きをもたせる、という意味をこめているのでしょう。
ウレパールは、体の中のゴミの成れの果てである尿素を、皮膚の維持のために再利用しているようにも思えます。黄金色の尿から真珠の皮膚ができるとは、できすぎた話に思えます。といっても、現在、尿素は化学合成によって作られており、ヒトの尿由来ではありません。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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