トラベルミン配合錠とはどんな薬?

トラベルミン配合錠(エーザイ、主成分ジプフィリン、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩)は、乗り物酔いで起こるめまいや吐き気、メニエール病のめまいの治療薬です。めまいは、バランス感覚の調節器官である三半規管の働きが悪くなっておこります。この時、脳の嘔吐中枢が刺激されて吐き気が起こります。有効成分であるジプロフィリンは、三半規管の血流をよくしてめまいを改善します。また、ジフェンヒドラミンは脳内のヒスタミンという神経伝達物質の働きを低下させ、嘔吐中枢の活動を弱めて吐き気を止めます。

目次

めまいが起こるメカニズム

めまいは、体の平衡感覚(体の傾きを知るための感覚)が、何らかの原因で乱れて起こります。平衡感覚は、耳の中の器官である三半規管で検出されます。三半規管にはリンパ液という液体がたまっていて、頭が動いたときのリンパ液の動きを三半規管表面の有毛細胞が検出します。その情報が脳に伝えられ、目からの視覚情報と三半規管からの情報を組み合わせて、体の位置が認識されます。この仕組みのどこかに異常が生じると、めまいやそれに引き続いて吐き気が起こります。

例えば、乗り物酔いでは乗り物の振動により、目からの情報と三半規管からの情報にずれが生じて、脳の機能が混乱し自分の位置が認識できなくなります。また、メニエール病という激しいめまいを起こす病気では、三半規管器官のリンパ液の量が増えてむくみ(内リンパ水腫)、有毛細胞がリンパ液の動きをうまくとらえられず、平衡感覚がうまく検出できなくなります。

すると、脳は自分の体の向きにあわせた姿勢が取れず、バランスが崩れてめまいがおこります。また、それに伴って吐き気を担当する脳部位である嘔吐中枢が興奮し、吐き気が起こります。


トラベルミン配合錠の作用メカニズム

トラベルミン配合錠はジプフィリン、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩の2つの成分が含まれる配合錠です。これらの成分は、平衡感覚の乱れを起こす仕組みの中の、三半規管と嘔吐中枢の両方に作用して、めまいや吐き気を改善します。

トラベルミン配合錠の成分のうち、ジプロフィリンは三半規管の働きを改善します。メニエール症での内リンパ水腫の原因の一つは、三半規管につながる血管が狭くなり血液の流れが悪くなることとされています。ジプロフィリンは、血液の筋肉の収縮力を弱めて血管を広げます。トラベルミン配合錠は、三半規管の血流を良くすることでメニエール病でのめまいを起こりにくくします。

また、トラベルミン配合錠の成分のうちジフェンヒドラミンは、脳に働きかけ、嘔吐中枢の興奮を和らげます。

ジフェンヒドラミンは、風邪薬や花粉症の薬で炎症やかゆみを止める効果を持つ成分で、体内のヒスタミンという物質の働きを抑えます。ここで、脳の中のヒスタミンは、神経回路を活動状態に保つ働きも持っています。そのため、ジフェンヒドラミン配合錠を服用するとヒスタミンの働きをおさえ、脳の活性度が低くなります(風邪薬の副作用である眠気は、ヒスタミンの作用が低下して起こります)。

この作用が、吐き気をコントロールする脳部位である嘔吐中枢で起こると、嘔吐中枢の活動が弱まり吐き気が止まるのです。もちろん、トラベルミン配合錠を服用後に眠ってしまい、吐き気自体感じないということも、効果の一部と考えられます。

「トラベルミン」という名前は、「乗り物酔いの治療薬であり、旅行には欠かせない薬になるように」という思いを込めて名づけられました。その名のとおり、トラベルミン配合錠を旅の必需品にしている人は多く「名前に値する立派な薬として活躍しています。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


トラベルミン(主成分ジプロフィリン)の構造式 トラベルミン(主成分ジフェンヒドラミン)の構造式