コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩)とはどんな薬?

コンサータ(ヤンセンファーマ、主成分メチルフェニデート塩酸塩)は、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の治療薬です。AD/HDでは、注意力や計画力を調節する脳部位「前頭前野」の機能に関わる神経伝達物質(ノルアドレナリンやドーパミン)の量が減り、前頭前野の働きが低下することで不注意や多動性などの症状が現れます。

コンサータの主成分であるメチルフェニデートは、脳内のノルアドレナリンやドーパミンの量を増やして、AD/HDの症状を改善します。

目次

コンサータの作用メカニズム

コンサータが用いられる注意欠陥/多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder ; AD/HD)とは、不注意(物事に集中することができず、忘れ物が多い)、多動性(落ち着きがなく、じっとできない)、衝動性(思いついた行動を唐突に行う、順番を待てない)などの行動により、日常生活や学業・仕事がうまくできなくなる病気です。

かつて日本では、AD/HDは個人の性格と考えられ、適切な診断や治療が行われませんでした。しかし、近年は脳の機能障害による発達障害の一種と認識されるようになり、コンサータなどの薬剤を用いた薬物治療が行なわれています。

AD/HDで注意力や計画性が低下するのは、これらの能力を調節する脳部位「前頭前野」の機能低下が一つの原因のです。前頭前野の機能は、ノルアドレナリンとドーパミンという神経伝達物質によってコントロールされています。

神経伝達物質は、神経細胞間の情報伝達に用いられ、片方の細胞から放出された物質が他方の細胞表面にある受容体というタンパク質に結合し、神経細胞を興奮させて情報を伝達します。

AD/HDでは、前頭前野でのノルアドレナリンとドーパミンの不足により機能低下がおこり、注意力や計画性の低下、衝動性などの症状が現れます。コンサータの主成分であるメチルフェニデートは、これらの神経伝達物質の量を増やします。

神経細胞から放出されたノルアドレナリンやドパミンは、ノルアドレナリントランスポーターとドーパミントランスポーターというタンパク質によって、再び神経細胞に取り込まれ(再取り込み)、脳内の量は減少します。

メチルフェニデートは、神経細胞にあるノルアドレナリントランスポーターとドーパミントランスポーターというタンパク質の働きを止めます。コンサータを服用すると、脳内のトランスポーターによる再取り込みが止まるので、脳内のノルアドレナリンやドーパミンの量が増えます。そのため、前頭前野の機能が改善し、AD/HDの症状が改善するのです。


コンサータの錠剤の秘密

コンサータの錠剤は、特別な技術(製材技術)を用いて開発された「放出制御型徐放錠」で、薬剤が長時間に渡ってじわじわと放出されます。また、錠剤表面には、メチルフェニデートを含む特殊コーティングがされています。

放出制御型徐放錠のおかげで、コンサータは作用の即効性と持続性の両方を持つ使いやすい薬となっています。

コンサータの錠剤が消化管に入ると、まずコーティングに含まれたメチルフェニデートが速やかに溶け出し、体内に吸収されて即効性の作用を示します。

その後、錠剤は、薬剤が持続的に染み出す段階に入ります。水分がコーティングを通り抜け、錠剤の中の「プッシュ層」にしみ込むとプッシュ層が膨らんでメチルフェニデートをじわじわと錠剤の外側に放出します。これにより、コンサータは持続的な作用を示します。

この2つのシステムを組み合わせることで、コンサータの錠剤は投与直後から10時間の間、持続的にメチルフェニデートを放出できます。1日1回朝に服用するだけで、日常生活を過ごすに十分な治療効果をえることができるのです。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


コンサータ(塩酸メチルフェニデート)の構造式