アジルバ(アジルサルタン)とはどんな薬? 効果がでるメカニズム

アジルバ(武田薬品工業、主成分アジルサルタン)は、高血圧の治療薬です。

アジルバの主成分であるアジルサルタンは、血管収縮に関与するアンギオテンシンIIという物質の作用を低下させ、血管を広げて降圧効果を示します。

アジルバは、同じメカニズムである高血圧治療薬ブロプレスを改良し、降圧作用をより高めた薬剤です。

この記事では、アジルバが効果を示すメカニズムについて解説します。

目次

アジルバの効果が出るメカニズム

高血圧は、全身の血管が収縮して狭くなり、心臓から全身に血液を届けるために、高い圧力が必要となった状態です。

高い圧力が血管に長期間加わると、血管にダメージが加わってもろくなります。その結果、脳、心臓、腎臓などの血管に障害が起こります。

こうなると、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などにかかりやすくなり、生命に関わる状況にもなりかねません。

そのため、高血圧と診断された場合には、アジルバなどの降圧薬を用いて、速やかに血圧を正常範囲に保つことが必要です。

アジルバは、血管の筋肉(血管平滑筋)を緩めることで降圧効果を示します。

アジルバの主成分であるアジルサルタンは、血管平滑筋収縮に関与するアンギオテンシンIIという物質の作用を強力に抑制します。

アンギオテンシンIIは、血管平滑筋の表面にあるアンギオテンシンII受容体というタンパク質に結合し、平滑筋を収縮させます。

一方、アジルサルタンは、アンギオテンシンII受容体に結合しますが、筋肉の収縮させる効果は持っていません。

そのため、アジルバを服用すると、アジルサルタンがアンギオテンシンIIを受容体に結合できなくなるので平滑筋は収縮できず、血管は広がります。

このようなメカニズムで、アジルバは全身の血管を拡張して降圧効果を示します。

アジルバのように、アンギオテンシンIIと受容体との相互作用を邪魔して機能を低下させる薬剤をアンギオテンシン受容体拮抗薬と呼びます。

英語のangiotensin Ⅱ receptor blockerという表記を略し、ARBと呼ばれることが多いです。


アジルバが強い降圧効果を示す理由

現在、国内では複数のARBが用いられていますが、アジルバはこれらの薬剤の中で最も強い降圧効果を持つとされています。

アジルバを開発した武田薬品は、高血圧患者を対象とした臨床試験で、自社のもう一つのARBであるブロプレスを比較対象として、アジルサルタンの降圧効果を評価しました。

臨床試験の結果、アジルサルタンはブロプレスよりも強い降圧効果を持つことが示されました。高血圧治療に使用されている投与量のブロプレスの血圧低下作用より、アジルバの効果が勝ったということです。

アジルバはブロプレスよりも降圧効果を高めることを目的に開発されました。

ブロプレスの主成分であるカンデサルタンの構造の一部を変えた化合物を何種類も合成し、アンギオテンシンII受容体への結合能力が非常に高いアジルサルタンを見出したのです。

さらに、アジルバの降圧効果の強さは、体内でのアジルサルタンの振る舞い(薬物動態)からも説明できます。

アジルサルタンは、カンデサルタンに比べ、脂溶性(脂への溶けやすさ)が増加するような化学構造になっています。

脂溶性が高い化合物は、同様に脂溶性が高い細胞膜に取り込まれやすい性質を持ちます。

その結果、アジルサルタンは、全身の臓器に速やかに分布し、細胞に長時間とどまり、アンギオテンシンIIの作用を抑制します。

このような性質から、アジルバは、他剤よりも強く、持続的な降圧効果を出すことが可能になったのです。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


アジルサルタンの構造式