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インデラル| 病院でもらった薬の値段Part2


インデラル
(塩酸プロプラノロール)
インデラル(アストラゼネカ、主成分塩酸プロプラノロール、薬価 10mg錠 = 15.3円)は、狭心症や高血圧の治療に用いられる薬です。インデラルは、β遮断薬(βブロッカー)とよばれる心臓の薬のなかで、最も早く実用化された薬の一つで、非常に長い間使われている薬です。

インデラルの狭心症に対する作用メカニズムは、インデラルが。心臓の活動をコントロールするβ受容体というタンパク質の働きを抑制して、心臓の働きを鎮め、狭心症のときに心臓を無理に働かせなくして、心臓を休ませる、というものです。

インデラルを発見したのは、ブラックというイギリスの研究者です。インデラルのコンセプト「心臓の活動をコントロールするβ受容体の働きを抑制して、心臓の働きを鎮め、狭心症のとき心臓を無理に働かせなくする」を考え出したのも、ブラックです。

ブラックは、狭心症の心臓は、心臓の血管が狭くなっており、血液から得られる酸素が不足して、思うように活動することが出来ないのではないか、と考えました。そこで、酸素不足にならないように心臓の働きを抑えてやれば、心臓を保護することができるのではないか、と考えたのです。

当時、動物にカテコールアミンやイソプロテレノールという物質を投与したときに起きる心臓の活動上昇は、交感神経を介したβ作用とよばれていました。ブラックは、このβ作用を抑制する薬を作れば、狭心症の治療が出来るのではないか、と考えました。

ブラックは、当時グラスゴー大学の先生だったのですが、このアイデアを持って企業(イギリスのICI社、現在のアストラゼネカ)に乗り込みました。大学では、新しい化合物を合成して作用を調べる、といった薬のスクリーニングは行えなかったからです。

この当時、実はβ受容体というタンパク質が実在するのかどうかは定かではなく、あくまで仮説の上での存在でした。現在では、β受容体というタンパク質の存在は確認されており、このタンパク質を直接調べることによって、簡単に薬の作用を調べることが出来ます(一日に数千化合物!)。しかし、ブラックらはこのβ受容体タンパク質を用いることが出来ませんでした。そこで、ブラックらは心臓に化合物を投与して、その働き(β遮断作用)を調べると言う、手間のかかる方法を用いることしか出来ませんでした。ただ、この方法は手間はかかるものの、薬物の作用は確実に検出できる優秀なものでした。

ICI社の合成科学者が、イソプロテレノールに似た様々な化合物を合成し、ブラックらの薬理学者がその薬物の作用を評価する。その結果をもとにして、合成化学者がさらに構造を変化させた化合物を合成する。この繰り返しにより、だんだんと強いβ遮断作用をもつ化合物が得られてきました。

こうして得られた化合物が。インデラル(塩酸プロプラノロール)です。実際には、インデラルの前に見つけた化合物(アルダリン、主成分プロネサロール)がインデラルと同じ作用をもち、臨床でも用いられたのですが、安全性の問題があったため、より安全なインデラルが変わりに用いられるようになり、大ヒットしました。

「薬物が作用するメカニズムを仮定し、その仮定を満たすような実験を想定し、合成化学者と協力して活性の高い化合物を探し出す」という、現在では当たり前の薬の開発方法は、このインデラルの発見に由来していると言っても過言ではありません。インデラル以後、様々なβ遮断薬がインデラルと同じような手法を用いて見つかるようになりました。

また、β遮断薬が発見されたことから、β遮断薬にしるし(放射性ラベル)をつけて、実際にβ受容体の存在を示すことが出来るようになりました。これは、後にβ受容体のタンパク質を発見するための大事なツールとなりました。

インデラルの発見というブラックの仕事は、狭心症の治療のみでなく、薬理学のさまざまな進歩に貢献しました。更に、ブラックは胃潰瘍の薬についても、同様な手法で、H2阻害薬(H2ブロッカー)のシメチジンという画期的新薬を産み出しました(このときは、スミスクライン社での仕事)。

普通、製薬会社の研究者は、会社にいる間に、一つ画期的新薬の発見に関われればラッキーだといわれます。このことからすれば、ブラックが1988年にノーベル医学生理学賞を受けたのは、当然のことだと思います。
一つでいいから、私も、こんなサクセスストーリーを体験したいものです。


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インデラル(塩酸プロプラノロール)の構造式

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