バルトレックスやゾビラックスとはどんな薬?

バルトレックス(グラクソ・スミスクライン、主成分塩酸バラシクロビル)とゾビラックス(グラクソ・スミスクライン、主成分アシクロビル)は、いずれも単純ヘルペスウイルス(HSV)や帯状疱疹ウイルス(VZV)の増殖を止める効果をもつ抗ウイルス薬で、これらのウイルスにより起こる皮膚疾患(単純疱疹や帯状疱疹)の治療に用いられます。

単純疱疹や帯状疱疹では、ヘルペスウイルスの感染した皮膚に小さな水ぶくれができ、免疫反応による強い炎症と痛みが起こります。

単純疱疹の場合、ウイルスが初めて感染した場合に非常に激しい免疫反応が起こり、水ぶくれの他に皮膚や粘膜がただれたりします(2回目以降は、ウイルスへの免疫がつくので症状はそれほどおもくありません)。

一方、帯状疱疹ではウイルスの最初の感染では水ぼうそうの症状を示しますが、治ったあともヘルペスウイルスが神経の中に残り続けます(潜伏感染といいます)。ストレスや高齢で免疫機能が低下すると、体内のウイルスが再び活動をはじめウイルスが感染している神経に沿った帯状の範囲の皮膚に水疱と炎症・痛みを生じます(帯状疱疹の名前の由来)。

中でも帯状疱疹は厄介な病気です。帯状疱疹の起こっている皮膚には激痛が生じ、例えば太ももにできた場合はズボンの布が当たるだけで耐えられない痛みが生じます。ウイルスが活性化している間は水疱と痛みは続きます。そして、帯状疱疹が治っても神経に電気が走るような痛みが長期間(3ヶ月以上)残ることがあります。帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹後疼痛)と呼ばれており、ロキソニンなどの痛み止めが効きにくく非常に治療しにくい痛みです。帯状疱疹の痛みを和らげ、帯状疱疹後神経痛を起こさないためには、できるだけ早く薬でウイルスを取り除く必要があります。

ヘルペスウイルスに対する抗ウイルス薬としては、古くからゾビラックスが用いられていました。主成分であるアシクロビルは、ウイルスの中のチミジンキナーゼという酵素タンパク質によって化学変化(リン酸化)を受け、アシクロビル三リン酸という物質になります。この化合物は、ウイルス増殖のメカニズムの中で、遺伝情報であるDNAを合成する過程を妨害するので、ウイルスは増殖できず抗ウイルス作用が現れます。一方、ヒトの細胞ではアシクロビルはリン酸化されないために、ウイルス以外の正常な細胞の増殖を抑えることはありません。


ゾビラックスは効果が優れており長く使われている薬ですが、欠点が一つありました。投薬量が多く、服用回数が多いのです。添付文書によると、帯状疱疹の治療での用量は、「通常、成人には1回アシクロビルとして800mgを1日5回経口投与」です。1錠が200mgなので、1回4錠ずつの服薬を1日5回することになります。正直、これは服薬する患者さんにとってもいろいろと不便です。そこで、ゾビラックスの欠点を改良した薬剤がバルトレックスです。

ゾビラックスの服用回数が多い理由は、アシクロビルがすぐ分解されるのが原因です。腸から吸収されたアシクロビルは、肝臓を通過するときに多くが分解されてしまいます(このような現象を初回通過効果と呼びます)。薬が分解されてしまうと抗ウイルス効果も弱くなってしまうので、薬をきちんと効かせるためには、次から次へと大量のゾビラックスを服用しなくてはいけません。

ゾビラックスの改良版であるバルトレックスは、帯状疱疹治療の際の投薬量は、「通常、成人にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与」です。服用回数が1日5回から3回に劇的に減っており、バルトレックスの方が、ゾビラックスにくらべ飲みやすくなっています。

バルトレックスで1日3回服用が可能になった理由は、有効成分であるバラシクロビルの構造にあります。バラシクロビルは、アシクロビルの構造に「長いしっぽ」をつけています。この尻尾の構造を付け加えたことが、バルトレックスの投薬回数を少なくできた理由です。

バルトレックス(塩酸バラシクロビル)

アシクロビルは肝臓ですぐ分解されますが、バラシクロビルも同じく肝臓で分解されます。ただし、分解を受けるのは長く伸びたしっぽの部分で、分解後できあがった化合物はアシクロビルなのです。バルトレックスの場合、肝臓からアシクロビルが供給されるので、肝臓で分解される前にウイルスがいる部位に薬剤が届くということなのですバルトレックスのような薬をプロドラッグといい、吸収されにくい薬を体内により多く吸収されるよう改良するときに使われます。

バルトレックスは、ゾビラックスに続く第2世代のヘルペス治療薬と呼ばれており、世界中で数多く使われています。