トランサミン| 病院でもらった薬の値段Part2


トランサミン
(トラネキサム酸)

トランサミン(第一三共、主成分トラネキサム酸、薬価 250mg錠 = 10.6円)は、出血しやすい状態が起こる病気(白血病や再生不良性貧血)や、体の特定の部位(肺や鼻、性器)で出血が起こりやすくなっている状態において、出血を起こしにくく効能を示します。一方、トランサミンは、湿疹や蕁麻疹、薬疹などの皮膚の病気で認められる腫れや痒み、口内炎や扁桃腺炎における痛みや腫れ、充血の治療、口内炎の治療にも用いられます。

このように、トランサミンは「出血の抑制」と「炎症の抑制」という異なる症状への効果を示します。このように、トランサミンが全く異なる種類の症状に効果を示す理由は、その作用メカニズムに理由があります。まず、出血抑制のメカニズム、次に炎症の抑制のメカニズムについてお話します。

血液の中には、血液を固めるメカニズム(凝固系)と、血液の塊を溶かすメカニズム(線溶系)の2つのメカニズムが共存しています。血液凝固系は、出血をしたときに出血が続かないよう、血液の固まりをつくるための仕組みです。一方、線溶系は血液の固まり(血栓といいます)を溶かすための仕組みです。生体内で血液がやたらめったらに出血したり固まったりしないのは、凝固系と線溶系のバランスがとれているからです。

凝固系と線溶系のバランスが崩れると、体内の血液の固まりやすさに異常が生じます。トランサミンは、線溶系の働きが異常に亢進して、出血がしやすくなっている状態で用いられます。トランサミンは、線溶系を妨害し出血しにくい状況を作り出します。

線溶系は血液の塊を溶かすための仕組みですが、この血液の固まりはフィブリンというタンパク質からできています。出血したというシグナルが凝固系に入ると、血液凝固因子と呼ばれるタンパク質が関わる様々な酵素反応が連続的に起こり、最終的にフィブリンができます。フィブリンは、網状の構造をしていて血液の塊「血栓」を作り出します。

フィブリンでできた血栓は、時間が経つと分解されていきます。血栓は出血を止めるのに重要である一方、血栓は血管の詰まりを起こして血液の流れを悪くすることで、体にとって悪い影響をもたらします。そのため、体には、血栓を溶かすための仕組みが必要となります。これが線溶系です。

白血病や再生不良性貧血などの病気では、線溶系の働きが高くなります。このような病気では何らかの傷害で血栓ができるべき状態になっても、線溶系の働きが高いため血栓がすぐ壊れ、その結果、出血しやすくなります。トランサミンは、過剰な線溶系の働きを抑制して、出血を防ぐ作用を示します。線溶系において、フィブリンの分解に関わるタンパク質は、プラスミンというタンパク分解酵素です。トランサミンは、プラズミンの働きを抑制して線溶系の働きを低下させ、出血を起こりにくくします。

このプラスミンは、線溶系だけでなく、生体反応のいろいろな場面で登場します。その中の一つに、炎症反応があります。トランサミンが炎症に関連する症状を抑制する仕組みは、ここにあります。

先に書いたように、プラスミンはタンパク質分解酵素です。タンパク質分解酵素の中には、生体反応のキーとなるタンパク質を分解し、生体反応のスイッチを入れるという役目を持つものがあります。。プラスミンも、そのような役目を持つタンパク質の一つです。

プラスミンは、炎症のときの痛みや腫れの原因となる物質、キニンの産生をコントロールします。炎症のきっかけとなるシグナルが生体にはいると、プラスミンがキニンの原料であるキニノーゲンからキニンを産生し、炎症に特徴的な腫れや痛みが発生します。トランサミンは、プラスミンの働きを抑制することで、キニンの産生を抑制し、炎症の症状を抑えます。

トランサミンの主成分、トラネキサム酸は、歯磨き粉の成分としても使われています(「トラネキサム酸配合」をキャッチフレーズにしている歯磨き粉もありますね)。これは、歯茎からの出血を抑える作用と、歯茎の炎症を抑える作用という、二つの効果が同時に期待されるからです。プラスミンの性質をうまくとらえた、賢い使い方ですね。



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トランサミン(トラネキサム酸)の構造式
トランサミン(トラネキサム酸)の構造式

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