アローゼン(センノシド)とはどんな薬?

アローゼン(ポーラファルマ、主成分センノシド)は、便秘の治療に用いられる下剤です。アローゼンは、センナという植物の葉っぱと実を1.5対1という割合で混ぜたものです。センナは、古くから民間薬として使われてきた植物で、葉の中のセンノシドという成分が強力な下剤としての作用を持っています。

アローゼンは、私も飲んだことがあります。昔ある薬を飲んでいたのですが、その薬の副作用で便秘が出る可能性がありました。そこで、便秘を防ぐためにアローゼンが処方されたのです。明るい黄色のアローゼンの袋は、何かをイメージさせるに十分な(笑)、インパクトのあるものでした。

アローゼンの原料であるセンナは、紀元前のエジプトやアラビアの医師によってその作用が発見され、1000年以上も前の9世紀にはヨーロッパに伝わっていました。それ以来、センナは世界中で使われるようになりました。そして、センナの成分であるセンノシドと呼ばれる化合物が、センナの作用の原因物質だとわかりました。

アローゼン(センノシド)の構造式

アローゼンを口から飲むと、アローゼンは胃や腸からは吸収されることがないので、そのまま大腸へと運ばれていきます。大腸の中には、腸内細菌と呼ばれる様々な種類の微生物が住み着いているのですが、この腸内細菌は、アローゼンに含まれる成分センノシドを体の中に取り込みます。すると、腸内細菌の中で、センノシドはレインアンスロンという物質に変換されます。このレインアンスロンという物質が、大腸を刺激することで、大腸の動きを活発にするので、アローゼンは強力な下剤としての作用を示すのです。

ところで、アローゼンは、強力な下剤の作用とともに、女性の子宮を収縮させる作用もあります。妊娠中の女性がアローゼンを飲むと、子宮が収縮するため、流産や早産が起こる可能性があります。そのため、妊娠中の女性はアローゼンを飲んではいけません。

アローゼンは、お医者さんで処方される薬なので、お医者さんの注意を守って飲めば、問題はありません。ただ、困ったことにアローゼンの原料であるセンナの葉っぱをつかったダイエット健康食品(たとえばお茶)がでまわっている、という話があります。

センナの茎は食品とされていて、お茶などに使われているのですが、センナの葉っぱは薬理作用をもつ立派な医薬品です。問題となっている商品は、例えば、センナの茎を入れているといいながら、センナの葉っぱを加えたお茶、というものです。センナのもつ下剤としての作用を利用して、ダイエット効果を持つ食品だと宣伝しているようです。

しかし、このような商品は、薬事法という法律に違反する商品で、安全性も保証されていません。実際に、下痢が止まらない、などの健康被害が各地で起こっているようです。下痢で体重を落とすなんてのは、もってのほかの話です。薬は、正しい使い方をしなければ、かならず体にダメージを与えます。簡単ダイエットという言葉に踊らされて、危ない食品(薬)をつかまされることがないように、気をつけたいものです

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。