ポララミン(d-マレイン酸クロルフェニラミン)とはどんな薬?

ポララミン(MSD、主成分d-マレイン酸クロルフェニラミン)は、40年以上も前から使われている、抗ヒスタミン薬と呼ばれる薬です。抗ヒスタミン薬という名前のとおり、ポララミンはヒスタミンという生体内物質の働きを抑える(抵抗する)作用を持つ薬です。ヒスタミンはさまざまな病気に関与しているため、ポララミンも様々な病気に用いられます。

ポララミンの効能を添付文書から並べてみると、様々な疾患が並んでいます。

蕁麻疹(じんましん),血管運動性浮腫,枯草熱,皮膚疾患に伴う掻痒(湿疹・皮膚炎,皮膚掻痒症,薬疹),アレルギー性鼻炎,血管運動性鼻炎,感冒等上気道炎に伴うくしゃみ・鼻汁・咳嗽。

なにやら難しい言葉が並んでますが、ポララミンの効能を症状によって簡単にまとめてみます。

  1. かゆみ(蕁麻疹、皮膚疾患に伴う掻痒(湿疹・皮膚炎,皮膚掻痒症,薬疹)
  2. はれ(血管運動性浮腫)
  3. 鼻水(アレルギー性鼻炎,血管運動性鼻炎、感冒等上気道炎)

ヒスタミンは、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)や細菌による感染などが刺激となって免疫細胞が活性化されたときに、免疫細胞から放出されます。そして、ヒスタミンは、皮膚や呼吸器の細胞のヒスタミン受容体(正確にはH1受容体)に結合し、H1受容体を活性化することで、1)から3)までの症状を引き起こします。

1)のかゆみは、ヒスタミンが皮膚の神経に影響を与えることでおこります。2)のはれと3)の鼻水は、血管にあるH1受容体が活性化されることで、皮膚や鼻の細い血管から水分がもれやすくなるためにおこります。皮膚の下に水分がたまるとはれになり、鼻の粘膜から外に染み出ると鼻水になるわけです。

このように、1)から3)の症状には、すべてヒスタミンが関係しているので、抗ヒスタミン薬であるポララミンは、これらの症状を抑えることができます。ポララミンは、H1受容体に結合する性質を持つため、ポララミンはヒスタミンがH1受容体に結合するのをじゃますることができます。ポララミン自体には、H1受容体を活性化させる作用がないので、ポララミンがH1受容体に結合してしまえば、ヒスタミンによるH1受容体の活性化は抑えられます。このようにして、ポララミンはヒスタミンによる症状を抑えるのです。

さて、ポララミンの副作用として「強い眠気」という症状が挙げられます。これは、ポララミンの抗ヒスタミン作用が脳の中で起こることが原因です。ヒスタミンおよびヒスタミン受容体は脳の中に存在して、神経活動のコントロールをしています。ポララミンは脳の中に入りやすい性質(脳内移行性)をもつので、脳の中でのヒスタミンの働きも抑えてしまい、その結果眠気を生じるのです。

ポララミンの場合、抗ヒスタミン作用により各種の症状を抑えるというメカニズムが、そのまま副作用のメカニズムにもなっているので、ポララミンを飲む際には副作用を避けることはできません。ポララミンを飲んだ後は、車の運転や危険な場所での作業は避けることが必要です。

現在では、ポララミン以外にも、数多くの抗ヒスタミン薬があります。例えば、眠気が起きにくい抗ヒスタミン薬もできています。これは、脳の中に入らないように薬の構造を工夫することで生まれました。

また、別の薬では、副作用の眠気を逆手にとって、抗ヒスタミン薬を睡眠薬として用いるという使い方もされています。これなどは、薬は使い方次第でいろんなことにつかえるという好例だと思います。

抗ヒスタミン薬は、一番身近な薬ではないかと思います。抗ヒスタミン薬の性質や副作用を理解して、仲良く付き合っていきたいものです。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


ポララミン(d-マレイン酸クロルフェニラミン)の構造式