セルベックス(テプレノン)とはどんな薬?

セルベックス(エーザイ、主成分テプレノン)は、胃炎や胃潰瘍で痛んだ胃の粘膜を治すための薬です。胃炎や胃潰瘍では、胃の粘膜を守る防御因子の働きが低下することで、胃酸の胃の粘膜に対する攻撃力が高まり、胃の細胞が傷づくことで炎症が生じます。

セルベックスは、様々なメカニズムによって、胃の粘膜を守り、傷ついた胃粘膜の再生を促進させます。

セルベックスは、2つの作用を持っています。1つは胃の防御を担当する生理活性物質の産生を高める作用で、もう一つは細胞を保護するタンパク質の産生を高めるという効果です。

  1. セルベックスは、胃を保護するプロスタグランジンを作り出す。
  2. 胃の表面は、胃酸や消化酵素によって胃自体が障害を受けるのを防ぐため、粘液で覆われています。胃炎や胃潰瘍では、この粘液が足りないために、胃の表面の細胞が傷ついてしまいます。セルベックスは、この粘液の量を増やす作用を持つ物質、プロスタグランジン(正確にはPGE2,PGI2)の産生量を増やす働きがあります。セルベックスにより、プロスタグランジンの量が増えると、粘液量がふえるために胃が胃酸や消化酵素によって傷つくのを防ぐことができます。

    また、プロスタグランジンは、胃の血管の血液量を増やす働きがあります。そのため、セルベックスは胃の血管の血液量が増やし、胃の細胞に栄養がいきわたることで、胃の細胞を保護することができます。

  3. セルベックスは、細胞を保護するためのタンパク質を作り出す。
  4. セルベックスは、傷ついた胃の細胞のなかで、熱ショックタンパク質(Heat Shock Protein、略してHSP)というタンパク質を作り出す作用があります。細胞に有害なストレス(熱とか傷害とか)が加わると、細胞内のタンパク質の構造が乱れ、うまく機能しなくなります。HSPは、このタンパク質の構造の乱れを直すことができるタンパク質(シャペロンと呼んでいます)です。セルベックスは、傷ついた胃の細胞にHSPを作らせることで、細胞を保護することができるのです。

もともとセルベックスは、植物が作り出すフィトンチッドという成分の研究から生まれました。フィトンチッドとは、植物が自分の身を守るために作り出している物質で、様々な作用を持っています。このフィトンチッドの中には、傷ついた部分を修復する作用をもつ、テルペン類と呼ばれる物質がありました。エーザイの研究者たちは、このテルペン類で胃の細胞を修復できるのではないか、と考え、さまざまなテルペン類を合成し、その結果セルベックスを作り出すことができました。

セルベックスは、自然をお手本にした薬です。自然は、薬を作り出すためのヒントをいろいろ与えてくれます。そのヒントをきちんと見つけ、よい薬を作っていきたいものです。

セルベックス(テプレノン)の構造式