エビスタ| 病院でもらった薬の値段Part2


エビスタ
(塩酸ラロキシフェン)
 エビスタ(日本イーライリリー、主成分塩酸ラロキシフェン、薬価60mg 錠 = 122.6円)は、骨粗しょう症を治療するための薬です。骨粗しょう症の患者さん(多くは高齢の女性)では、骨の量(骨密度)が小さくなり、骨がもろくなって骨折しやすい状態になっています。エビスタは、骨粗しょう症の患者さんの骨密度低下を防ぐ働きを持っています。そのため、エビスタを服用することで、骨の強さは正常に近い状態にもどり、骨折が起こりにくくなります。

 骨粗しょう症の原因として、女性ホルモンであるエストロゲンの量が減少するということが知られていました。例えば、雌ラットの卵巣を手術によって取り除くと、骨の量が減り、骨密度が小さくなります。これは、高齢の女性では、卵巣の機能が衰えて女性ホルモンが減って骨がもろくなる、という状態を表しています。

 このことから、エストロゲンと同じ作用を持つ化合物は、骨がもろくなるのを防ぎ、骨粗しょう症の治療薬となると考えられました。このコンセプトに基づいて開発されたのがエビスタです。

 エビスタは、最初は乳がんの治療薬として開発されました。乳がんの細胞は、エストロゲンによって増殖のスピードが上がります。そこで、エストロゲンの作用を抑える化合物は、乳がんの増殖も止めると予想されました。このアイデアに基づき、エストロゲンの作用を抑える化合物を探索して得られた薬がエビスタです。エビスタは、乳がんの増殖を抑える働きをもち、かつ、エストロゲンの代表的な作用である子宮への作用(子宮が大きくなる)を阻害することが確認されたので、エストロゲンの作用を抑える理想的な化合物と考えられました。

 ところが、エビスタには不思議な作用があることがわかりました。卵巣を摘出した雌ラットにエビスタを飲ませ続けると、エストロゲンの不足によっておこる骨がもろくなる症状が改善されたのです。本来、エビスタはエストロゲンの働きを邪魔するための薬と思われていたので、この骨に対する作用は予想外のものでした。

 エビスタの骨粗しょう症に対する治療効果は、臨床試験でも確認されました。そのため、エビスタは抗がん剤ではなく、骨粗しょう症の治療薬として用いられるようになったのです。

 エビスタの作用メカニズムは次のように考えられています。

エストロゲンは、エストロゲン受容体というタンパク質に結合して活性化させる作用をもっています。この活性化されたエストロゲン受容体が遺伝子の働きをコントロールして、様々な生理作用を引き起こします。

エビスタは、このエストロゲン受容体に結合する能力を持っています。ここからが、エビスタの変わった性質なのですが、エビスタが結合したエストロゲン受容体は、骨の中ではエストロゲンの作用を強めるのに対し、乳がん細胞や子宮ではエストロゲンによる作用を弱めます。

エストロゲン受容体が遺伝子をコントロールするには、相方となる別のタンパク質(転写因子)が必要です。実は、骨と、乳がん細胞や子宮とでは、存在する転写因子の種類が違っています。そのため、エビスタは、体の部分部分でエストロゲン受容体に対する作用が異なるのです。

エビスタのような化合物は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(Selective Estrogen Receptor Modulator: SERM)と呼ばれています。これは、体の部位によって、エストロゲン受容体の働きを別々にコントロールする、という意味です。おんなじタンパク質にくっつくのに、体の部分部分で正反対の作用を示す。。薬を作ってると、自然はほんと不思議だなぁ、と思います。



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エビスタ(塩酸ラロキシフェン)の構造式
エビスタ(塩酸ラロキシフェン)の構造式


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