デュロテップパッチ(フェンタニル)とはどんな薬?

デュロテップパッチ(ヤンセンファーマ、主成分フェンタニル)は、癌によって生じる強い痛み(癌性疼痛)の治療に使われる薬です。デュロテップパッチの「パッチ」とは、貼り薬を表します。デュロテップパッチは、皮膚に貼付けるタイプの薬で、一回貼ると3日間(72時間)のあいだ効果を示す使いやすい薬です。

デュロテップパッチは、貼り薬のシートの中にある、主成分のフェンタニルを貯蔵するための薬物貯蔵層と、一定のスピードで貯蔵層からフェンタニルを皮膚に放出するための放出制御膜からできています。デュロテップパッチを貼ってから72時間の間は、一定の割合でフェンタニルが皮膚から吸収され、血液中のフェンタニルの量を一定に保つことで、持続的に痛みを抑えることができます。

一般に、癌性疼痛の治療には、塩酸モルヒネなどのモルヒネ製剤が使われています。デュロテップパッチは、このモルヒネの効果が弱まったり、モルヒネが使いづらくなったときに、モルヒネの代わりに用いる薬です。

モルヒネは強力な痛み止めで、強い痛みに対しても十分な鎮痛作用を示します。癌が進行して痛みが強くなると、モルヒネの投与量を増やして痛みを止めていきます。ただし、モルヒネには、多くの副作用(便秘、嘔吐、眠気)があるため、投与できる量には限界があります。

このような状態になると、モルヒネに代わる薬を使用しなければいけません。デュロテップパッチの主成分であるフェンタニルは、モルヒネと同じオピオイドと呼ばれる種類の薬です。これらオピオイドは、神経細胞にあるオピオイドμ受容体というタンパク質に結合して、これを活性化させます。μ受容体は、神経の働きを強力に抑制する働きをもっているので、オピオイドを投与すると痛みを止めることができます。フェンタニルは、モルヒネよりも100倍以上強い鎮痛作用をもっているので、モルヒネの代わりに使用することができるのです。

また、癌の症状が進んで、モルヒネが口から飲めなくなることもあります。デュロテップパッチは貼付けることで効果をしめすので、薬を口から飲めない患者さんにでも使用することができます。

疼痛治療において、モルヒネからデュロテップパッチなどの他のオピオイドに薬を切り替えることを、オピオイドローテーションと呼んでいます。オピオイドローテーションにより、昔に比べて癌性疼痛はコントロールしやすくなりました。

痛みの有無は、癌患者さんの生活の質(QOL=quality of life)に関わる重要な項目であることから、デュロテップパッチの次の薬剤がこれからも開発されていくと思います。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


デュロテップパッチ(フェンタニル)の構造式