セフゾン(主成分セフジニル)とはどんな薬?

セフゾン(アステラス製薬、主成分セフジニル)は、細菌感染によって起こる皮膚の炎症や化膿、扁桃炎、中耳炎、急性気管支炎、肺炎、膀胱炎、中耳炎、のどの炎症などの治療に用いられる抗生剤です。主成分のセフジニルは、細菌をとりまく細胞壁の材料を作れなくして、細菌を破壊することで抗菌作用を示します。

目次

セフゾンの作用メカニズム、どうして便が赤くなる?

セフゾンの主成分であるセフジニルは、細菌の周りを取り巻いて細胞を形作る細胞壁を作れなくして殺菌作用を示します。

細菌の細胞壁は、ペプチドグリカンという物質が綿密に結びついて出来ていて、細胞の中からの圧力で細菌が破裂しないように保護する役割を持っています。細胞壁を作るときには、ペニシリン結合タンパク質という酵素タンパク質がペプチドグリカン同士を結合させ(架橋反応といいます)、網目のような構造をもつ細胞壁を作ります。

セフジニルは、ペニシリン結合タンパク質に結合して、ペプチドグリカン同士の架橋反応を止めてしまいます。すると、細菌は十分な強度を持つ細胞壁を作れなくなり、細胞内外の圧力のバランスが取れなくなって、細菌は破裂してしまいます。このようなメカニズムによって、セフゾンは殺菌作用を示すのです。

セフゾンを服用すると、便が赤くなることがあります。薬剤を服用するときに、鉄を含む食品を一緒に食べると、腸の中でセフジニルと鉄のイオンが結合して、赤色をした化合物(鉄イオンとセフジニルとの錯体)ができます。この錯体は腸から吸収されないので、そのまま便の中に排出されるので、便が赤く見えるのです。

特に、貧血の治療に用いられる鉄剤(例:フェロミア(クエン酸第一鉄ナトリウム)とセフゾンを一緒に服用すると、セフジニルの多くが錯体を作ってしまい、腸からの吸収量が減少して薬剤の効果が低下してしまいます。薬の飲み合わせには注意が必要なので、医師や薬剤師には自分の飲んでいる薬をきちんと説明することが大事です。


セフゾンと耐性菌

セフゾンの作用メカニズムは、セフジニルの標的である「ペニシリン結合タンパク質」から予想される通り、抗生物質の先駆け「ペニシリン」と同じです。セフジニルは、ペニシリンの仲間である抗生物質セファロスポリンをヒトの手によって改良・進化させた化合物で、抗菌作用を高め、弱点を改善しています。

抗生物質は感染症治療を一変させました。しかし、細菌はすぐさま対抗手段を産み出し、薬剤が効かない細菌(耐性菌)が登場しました。対抗手段とは、βラクタムという化学構造を壊してしまう「βラクタマーゼ」という酵素タンパク質です。βラクタムは、ペニシリンやセファロスポリンに共通して含まれる化学構造で、βラクタマーゼがこの構造を分解すると薬剤の効果はなくなり、細胞を殺せなくなります。

しかし、人間も負けてはいません。セフジニルはβラクタマーゼで壊されないように化学構造に工夫を加えています。そのため、ペニシリンやセファロスポリンのような耐性菌にも作用を示します。ただ、細菌も手強く、セフゾンへの耐性を持つ細菌も、すでに存在しています。

耐性菌が生まれる原因の一つには、安易な抗生物質の使用があります。例えば、以前は風邪に対してセフゾンなどの抗生物質が処方されていました。しかし、風邪の原因のほとんどはウイルス感染であり抗生物質は効果を示しません。一方、抗生物質が使用されれば確実に耐性菌は発生します。本来の目的ではない無駄な投薬で耐性菌を生み出すのは、非常に憂慮すべき事態です。

感染症治療における人間と細菌とのイタチゴッコは、永遠に終わりません。細菌が変化するスピードは、新薬開発のスピードに比べはるかに早いからです。とはいっても、手をこまねいている訳にはいきません。新薬を開発すると共に、耐性を起こしにくいような薬の使い方をする努力も必要です。


セフゾン(主成分セフジニル)の構造式