レミッチ(ナルフラフィン塩酸塩)とはどんな薬?

レミッチ(鳥居薬品,主成分ナルフラフィン塩酸塩)は,人工透析を受けている患者さんに起こるかゆみを治療するための薬です。

レミッチが使用される人工透析を受けている患者さんでは,腎臓の機能が大きく低下していて,血液中の老廃物を取り除くことができません。そのため,人工腎臓という機械で血液中の老廃物を取り除く人工透析という方法が必要になります。

人工透析を受けている患者さんには,かゆみを訴える方が多いことが知られています。このかゆみは通常のかゆみ止め(抗ヒスタミン薬など)では収まることがないとされています。レミッチは,このようなかゆみに対して治療効果をもつ初めての薬です。

レミッチは,神経細胞の表面にあるタンパク質,オピオイドκ受容体を活性化する働きを持っています。レミッチがオピオイドκ受容体に結合し,これを活性化すると,神経細胞の活動は低下します。レミッチは,かゆみという感覚を伝える神経細胞の働きを低下させることで,かゆみを抑えるのではないかと考えられています。

レミッチは神経細胞の働きを低下させることから,眠気が生じたり,頭がふらっととしたり(めまい)する副作用が報告されています。レミッチは一日一回の服用で十分効果を示すことから,副作用の影響を防ぐために,レミッチは夕食前もしくは寝る前に服用することが薦められています。透析患者さんのかゆみがいちばんつらいのは「夜寝ているときにかゆみのために寝られない」という場合であることから,寝る前に服用するというのはもっともよいタイミングだと考えられます。

レミッチのようなかゆみの評価には,マウスによる実験が行われます。マウスの皮膚にかゆみを起こす物質(ヒスタミン,サブスタンスPなど)を投与すると,マウスはかゆがってぽちぽちと掻く動作(スクラッチング)を起こします。このスクラッチングの回数が減れば,かゆみ止めとしての効果があると判断するわけです。

このスクラッチングは,マウスでは認められるのですが,同じネズミの仲間でもラットでは認められないといわれています。ラットはかゆみをどう感じているのか?かゆみを感じないとは思えないのですが,とても不思議だな,と思います。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


レミッチ(ナルフラフィン塩酸塩)の構造式