イクセロンパッチ(リバスチグミン)とはどんな薬?

イクセロンパッチ(ノバルティス、主成分 リバスチグミン)は、アルツハイマー病の治療薬です。日本では、2011年7月に発売されました。イクセロンパッチのパッチとは、パッチ剤(貼り薬)を表しています。パッチというのは、英語でいうpatch,当て布。パッチワークのパッチですね。薬を染みこませた貼り薬を皮膚に当てる、ということです。

これまで、アルツハイマー病の治療薬としては飲み薬が用いられてきましたが、イクセロンパッチはこれらとは異なり背中や腕、胸に貼りつけて使います。

イクセロンパッチの主成分であるリバスチグミンは、アルツハイマー病治療薬として広く使われているアリセプト(エーザイ、主成分塩酸ドネペジル)と同じ作用メカニズムを持つコリンエステラーゼ阻害薬と呼ばれる薬です。

アルツハイマー病は記憶機能が低下する病気です。アルツハイマー病患者の脳では、記憶機能に関与する脳内のアセチルコリンという物質の量が減ります。コリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリンを分解する酵素、コリンエステラーゼの働きを止め、アセチルコリンの量を増やすことで、記憶機能の低下を防ぎます(正確には、記憶機能低下の進行を遅らせる)。

アリセプトとイクセロンパッチの最も異なる点は、最初にも述べた通り、イクセロンパッチが貼り薬であるということです。貼り薬の場合、薬の成分が、皮膚を介して、長時間にわたり連続して体内へと放出・吸収されます。イクセロンパッチの場合、成分が連続して、ゆっくりと薬剤が吸収されることで、コリンエステラーゼ阻害が原因となる悪心や嘔吐という副作用が減少するという良い効果が得られます。

アルツハイマー病の患者さんの場合、痴呆症という病気の性質上、薬の服用を忘れることが多い(薬を飲んでる事自体忘れてしまう)ことがあります。イクセロンパッチのような貼り薬だと、患者さんや看護する人が、薬を服用しているかどうかか、すぐわかります。また錠剤と違い、どれだけの量を服用(貼っているか)かもわかります。

このように、イクセロンパッチは、患者さんおよび介護をする方にとって、非常に使いやすい薬となっています。作用メカニズムが同じでも服用の仕方で薬はぐんと使いやすくなる、という良い例だと思います。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


イクセロンパッチ(リバスチグミン)の構造式