オレンシア(アバタセプト)とはどんな薬?

オレンシア(ブリストル・マイヤーズ、小野薬品工業、主成分 アバタセプト)は、関節リウマチの治療薬です。関節リウマチでは、何らかの理由で免疫細胞が自分自身を攻撃して、炎症や組織の破壊が起こります。主成分のアバタセプトは、炎症を引き起こすリンパ球「T細胞」の活性化スイッチであるCD80/CD86というタンパク質の働きを抑制して、関節リウマチの関節炎を改善します。

目次

関節リウマチとT細胞

関節リウマチは、何らかの原因で免疫細胞が関節の細胞を攻撃することで起こる病気です(自己免疫疾患といいます)。関節をおおう滑膜という膜に免疫細胞が集まって関節炎と関節痛が起こります。また、関節炎が進行すると、関節をつくる軟骨や骨が破壊されて、関節がなめらかに動かなくなります。その結果、手足をうまく動かせなくなり、日常生活の動作が困難になります。

関節リウマチでの関節炎を引き起こす主要な免疫細胞は、T細胞というリンパ球(白血球の一種)です。T細胞は、活性化するとサイトカインというタンパク質を分泌します。サイトカインは、さまざまな免疫細胞を活性化させ、免疫反応を強めたり、骨や軟骨を破壊する細胞の機能を高めます。

このような関節リウマチの発症メカニズムを考えると「T細胞の活性化を抑制すれば、関節リウマチの関節炎を治療できるのではないか」という発想が出てきます。このコンセプトから生まれた薬剤がオレンシアです。


オレンシアの作用メカニズムと副作用

オレンシアはT細胞活性化を抑制しますが、主成分のアバタセプトの標的細胞はT細胞ではありません。アバタセプトは、T細胞の活性化刺激を与える抗原提示細胞という免疫細胞の機能を低下させます。

抗原提示細胞とは、T細胞の攻撃対象の目印である「抗原」をT細胞に見せる役割を持つ細胞です。体内に侵入した微生物やウイルスは、抗原提示細胞にとりこまれ、細かいタンパク質の断片(抗原)に分解された後、細胞表面に提示されます。

T細胞は細胞表面にあるT細胞受容体というタンパク質を使って、抗原提示細胞が提示した抗原を確認します。そして、抗原がT細胞受容体とうまく結合できたときに限りT細胞活性化のスイッチがオンになるのです。これは、特定の抗原が侵入したときだけ、免疫系が作動するための仕組みです。

しかし、実はT細胞活性化のスイッチはもう一つあります。T細胞の表面にはCD28というタンパク質があり、抗原提示細胞の表面にはCD80/86というタンパク質があります。T細胞の活性化には、CD28とCD80/86とが結合してスイッチがオンとなる必要があるのです(共刺激シグナルとよびます)。

アバタセプトは、遺伝子組換え技術によって作られたタンパク質で、CD80/86に選択的に結合するCTLA4というタンパク質の構造を含んでいます。アバタセプトはCD80/86と結合することで、CD28とCD80が結合できなくして共刺激シグナルを止めます。その結果、オレンシアを投与すると、抗原提示細胞によるT細胞の活性化がとまり、T細胞が引き起こす各種免疫細胞の活性化もストップするので、関節炎が改善するのです。

一方、オレンシアの標的である抗原提示細胞は、外敵が侵入したときにT細胞に攻撃の指令を出す役割を持っています。そのため、アバタセプトがT細胞活性化を抑制すると、外部からの病原体に対する防御が弱くなり感染症が起こりやすくなります。オレンシアの使用では感染症に対する十分な注意(とくに高齢者について)が必要です。