ラピアクタ(ペラミビル水和物)とはどんな薬?

ラピアクタ(塩野義製薬、主成分 ペラミビル水和物)は、A型またはB型インフルエンザの治療に用いられる薬です。

ラピアクタは、ノイラミニダーゼ阻害薬というタイプの薬です。インフルエンザウイルスは、細胞に感染すると、感染した細胞のいろいろなタンパク質を用いて自分自身をコピーし、増殖します。この増殖したウイルスは、細胞から放出されて他の細胞に感染します。ラピアクタの標的であるノイラミニダーゼは、ウイルスが細胞から放出されるときに、ウイルスを細胞から切り離す役割を持っています。ラピアクタは、このノイラミニダーゼに結合し、ノイラミニダーゼの働きを止めてしまいます。すると、ウイルスが感染細胞の外に出られないので、体内での感染拡大を防ぐ事ができるというわけです。

ラピアクタのようなノイラミニダーゼ阻害薬は、ウイルスの増殖を直接止めるわけではありません。ウイルスの体内での拡大を防いで、症状の悪化を防いだり自然治癒の手助けをするための薬です。

現在、インフルエンザ治療に用いられているノイラミニダーゼ阻害薬薬としては、ラピアクタの他にタミフル、リレンザ、イナビルがあります。ラピアクタが他の薬剤と異なる点は、点滴によって投与されるというところです。タミフルは飲み薬、リレンザとイナビルは口から気管へと吸い込んで服用する吸入薬になっています。

通常、インフルエンザで病院を受診した時、ラピアクタの処方を受けることは少ないと思われます。点滴という投与法は、「速やかに効果を出すことができる」「自分自身で薬が服用できない患者さんにも、確実に薬を体内に入れることができる」という利点がある一方、「患者さんに負担がかかる」「処置に時間と場所と人出がかかるので、多くの患者さんを同時に処置できない」などの欠点もあります。インフルエンザで多くの患者が受診するような状況では、「多くの患者さんを同時に処置できない」という点が特に問題になるのではないかと思います。

このような特徴を考えると、ラピアクタは「重い症状を示し速やかに薬の投与が必要な患者さん」「飲み薬や吸入が自分自身でできないような患者さん」に対して使いやすい薬、ということになります。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


ラピアクタ(ペラミビル水和物)の構造式