ホスレノール(炭酸ランタン)とはどんな薬?

ホスレノール(バイエル薬品、主成分炭酸ランタン水和物)は、慢性腎臓病の合併症である高リン血症の治療薬です。腎臓の機能が低下すると、血液中のリンを尿から排出できずリンの量が増えます。リンはカルシウムと結合して血管をつまらせたり、骨を溶かすホルモンを分泌させて骨をもろくします。

ホスレノールの主成分である炭酸ランタンは、食物中のリン酸と結合して血液中への吸収を低下させ、高リン酸血症が悪化するのを防ぎます。

腎臓は、体内の老廃物を尿とともに体外に排泄する臓器です。慢性腎臓病では、腎機能が低下して血液中の不必要な物質を捨てることができなくなり、さまざまな合併症が起こります。

ホスレノールが効能をもつ高リン酸血症では、リンが排泄できなくなり、血液中に大量のリンがたまります。

大量のリンは、血液中のカルシウムと結合し、リン酸カルシウムという物質を作ります。リン酸カルシウムは血管表面にへばりつき(石灰化といいます)、血管の太さを狭めます。脳の血管では脳梗塞、心臓の冠状動脈では心筋梗塞を起こす原因となります。

また、リン酸カルシウムができると血中のカルシウムが減るので、減った分を補充するために骨を溶かすPTHというホルモンが分泌されます。その結果、骨からカルシウムがどんどん供給されますが、それと同時に骨はもろくなって骨折しやすくなります。

慢性腎臓病での高リン酸血症の治療には、血液中のリンを減らす必要があります。ホスレノールは食べ物からのリンの吸収をとめて、体内のリンの量を正常範囲に保ちます。

ホスレノールの主成分である炭酸ランタンは、食物中のリン酸と結合して水に溶けにくい物質(難溶性塩)を作ります。水に溶けない難溶性塩は消化管から吸収されず便として体外に出るので、リンは血液に吸収されない、というわけです。

ホスレノールは、食事の直後(5分以内)に服用します。慢性腎臓病の患者さんや人工透析を受けている患者さんは、水分の排泄能力も低下しているので、水分の摂取は厳しくコントロールされています。そのため、ホスレノールは水なしでも飲めるような工夫がされています。

ホスレノールチュアブル錠は水無しで噛み砕いて服用します。これは、薬剤を細かくしてリン酸が炭酸ランタンと結合しやすくするためです。また、口に含んで唾液で溶かせるOD錠(口腔内崩壊錠)も用意されています。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


ホスレノール(炭酸ランラン水和物)の構造式