「電気生理学」とは、生体の電気的活動について調べる学問のことです。
生物が生命活動を行うには、電気的活動(微弱なものですが)が重要な役割を果たします。主なものを挙げると、脳における信号伝達、感覚の伝達、心臓の拍動、筋肉の収縮。これら生体内での電気活動は、さまざまなイオン(ナトリウム、カリウム、カルシウム)などが、細胞膜を介して異なる濃度で存在しており、ある種の引き金でイオンチャネル(特定のイオンを選択的に通す穴)を通ることで、細胞内外の電気的バランスが変化することで生じます。このイオンの動きをマクロ的な視点で見ると、電流、電圧といったパラメータであらわすことが出来ます。電気生理学は、このような生体の電気活動を様々な手法で検出・解析します。
1)個体/臓器レベルでの例:健康診断でおなじみ心電図。薬剤による副作用(不整脈)発生の確認に使用。知覚神経や脊髄に電極を刺し、痛み刺激による電気的活動(発火)を調べる。脳の切片を使い、脳内の異なる部位に電極をおき、神経回路の仕組みを調べる。電気的波形の変化を指標に薬剤の評価をする(またはその逆で、薬剤刺激による電気的波形変化から、薬剤のメカニズムを推定する)ことが多い。
2)細胞レベル/分子レベルでの例:パッチクランプ法:具体的には、組織、細胞に電極を当て、電圧をかけたときの電流の大きさを測定する。詳しい方法論は省略。細胞1個、細胞膜の一部分、極端な場合はイオンチャネル1つ、などを通過する電流についての情報を得ることが出来る。イオンチャネルの解析や、イオンチャネルに作用する薬剤の評価に頻用される。顕微鏡下で電極を細胞に貼付けたり、細胞の機嫌をとるためのいろんなコツがあるので、ちょっと難しい。しかし、最近では自動パッチクランプ装置が発売されていて、人並みの精度で評価できるようになった。すごい。
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