開発コードとは?新薬につく番号の意味と付け方(FK506などの例)

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開発コードとは、製薬会社が、薬として製品化を目指す化合物(開発品)につける番号です。会社名の頭文字と数字を組み合わせたものが多く(例:武田薬品工業のTAK-438)、一般名(成分名)が決まるまでは、この番号で呼ばれます。

化合物番号と開発コードの違い

化合物番号は、製薬会社で合成されたすべての化合物につけられる番号で、薬剤開発の早期で使用される番号です。一方、開発コードは薬として製品化を目指す化合物、つまり選ばれた優れた化合物につけられる番号です。

製薬会社では、毎日多くの化合物が合成されます。その化合物の一つ一つに「アスピリン」のような名前をつけるのは現実的ではありません。しかし、情報の取りあつかい上、呼びやすいように何らかの命名はしなくてはいけません。そこで、製薬会社では、化合物ごとに番号をつけることで、化合物の情報を管理しています。化合物番号のフォーマットは、アルファベットの頭文字+数字が一般的です。

メドケム(新しい化合物の合成担当)が化合物を合成すると、必ず化合物番号がつきます。これはすべての化合物につけられる番号なので、数字の桁数は多く(6桁以上)なるのが普通です。

開発コードは、製品化に進めることが想定される化合物につけられる番号です。スクリーニングで、有効性、安全性、薬物動態、製造面などの観点から選ばれた最も良い化合物(開発品)につけられます。選ばれた化合物なので、数字の桁数は、化合物番号に比べて少ないことが多いです(3〜4桁など。ただし、ファイザーのPF-07321332のように、長い番号を使う会社もあります)。

臨床試験の開始を目指した作業を始めることが社内で承認されるタイミングでつけられることが多いので、創薬に携わる研究者にとって開発コードが付くというのは、重要なマイルストーンになります。

薬の名前の移り変わりの図。合成したすべての化合物につく化合物番号(例ABC-1234567)から、選ばれた開発品につく開発コード(例XYZ-123。研究者のマイルストーン)、臨床試験の段階でつく一般名、発売のときにつく商品名へと進み、化合物の数はしぼられていく。例:FK506→タクロリムス→プログラフ。

図:AIで作成(番号は架空の例)

開発コードの付け方(会社ごとの頭文字)

国内と外資系の各社の開発品から、頭文字を抜き出してみると、次のようになります。

会社頭文字
武田薬品工業TAK
第一三共DS
アステラス製薬ASP
エーザイE
住友ファーマDSP(旧社名「大日本住友製薬」の頭文字)
小野薬品工業ONO
ファイザー(米国)PF
MSD(米国メルク)MK
アストラゼネカ(英国)AZD
イーライリリー(米国)LY
ノボ ノルディスク(デンマーク)NN

製薬会社同士が合併すると、その後の開発品には、新しい頭文字のコードがつけられます(山之内製薬(YM)と藤沢薬品工業(FK)が合併したアステラス製薬では ASP です)。古い会社の頭文字が、今でも化合物番号の中に生きているかは、社外からはわかりません。ただ、もし消えてしまうとなると、やはりさみしい気持ちになるのではないかと思います。

有名な開発コードの例

開発コード一般名(主な商品名)会社
FK506タクロリムス(プログラフ)藤沢薬品工業(現:アステラス製薬)
YM617タムスロシン(ハルナール)山之内製薬(現:アステラス製薬)
E2020ドネペジル(アリセプト)エーザイ
ONO-4538ニボルマブ(オプジーボ)小野薬品工業
TAK-438ボノプラザン(タケキャブ)武田薬品工業
MK-3475ペムブロリズマブ(キイトルーダ)MSD(米国メルク)
STI571イマチニブ(グリベック)ノバルティス(スイス)
PF-07321332ニルマトレルビル(パキロビッド)ファイザー(米国)

FK506は、タクロリムスという一般名より、コード番号のほうが有名だと思います。例えば、FK506が結合するタンパク質は「FKBP(FK506 Binding Protein)」と呼ばれていて、開発コードがタンパク質の名前にまで残るくらいです。薬の研究が、生命科学の研究そのものにも大きな影響を与えた、すごい薬ということでもあります。

また、1つの薬に、開発コードが2つあることもあります。ニボルマブ(オプジーボ)は、小野薬品工業では「ONO-4538」、共同で開発したブリストル・マイヤーズ スクイブでは「BMS-936558」と呼ばれていました。このような場合、情報を集める際には二通り調べないといけないので、ちょっと大変ですね。

関連記事:プログラフ(タクロリムス)、アリセプト(ドネペジル)、タムスロシン

開発コードに愛着がわく理由

私たちの現場では、化合物番号よりも開発コードの方が愛着があったりします。

研究所の会議室で、白衣の研究者たちが、ホワイトボードに大きく書かれて赤丸で囲まれた開発コード「XYZ-123」と化学構造式を見ながら、うれしそうに話しているイラスト。

イラスト:AIで作成(番号と化合物構造は架空の例)

自社化合物の場合、開発コードが付くということは、有望な化合物だということで、社内でも話題になることが多くなります。もちろん、ここまでの苦労があるからこそ、なんですけどね。一般名もまだ命名されていない(一般名がつくのは、開発コードがついた後、臨床段階であるのが普通です)ので、コード番号を繰り返し口にすることになり、そのたびに身についていくという感じです。

他社の化合物の場合も、意識するのは、同じ開発段階にある開発品です。一般名がまだついていないので、コード番号で考えざるを得ません。たとえ一般名がついた後でも、なじみの深いコード番号が、頭からすっと出てきます。また、最近の薬の一般名は、複雑な命名規則から作られる、ややこしいものが多く、呼びにくいというのも一因かもしれません。

開発コードの後につく商品名にも、それぞれ由来があります。興味のある方は、「薬の名前の由来」の記事もご覧ください。