陽性対照(ポジコン)とは?陰性対照との違いと選び方

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陽性対照(ポジコン)は、実験が成立していることを確かめるために置く、「見たい作用が必ず出る」と分かっている比較対象です(例えば、効くことが分かっている既存の薬)。反対に、陰性対照(ネガコン)は、「目的の薬がなければ、その作用は出ないはず」の比較対象です(例えば、水や溶媒)。この2つを置くことで、実験で見えた変化が、調べたい薬によるものか、それ以外のノイズによるものかを切り分けます。

陽性対照と陰性対照の違い(見たいものとノイズの切り分け)

実験で何か変化があったとき、確かめたいことは二つあります。見たい効果をきちんと検出できているか(陽性対照で確かめる)。見えた効果が、調べたい薬以外の原因によるものではないか(陰性対照で確かめる)。陽性対照で作用が出なければ、その実験は成立しません。陰性対照で作用が出たら、添加の方法や環境など、薬以外の要因が原因かもしれません。

例:血圧降下剤Aの効果を調べる(薬は蒸留水に溶かして飲ませる)

グループ飲ませるもの役割
1蒸留水のみ陰性対照(溶媒群)
2効くことが分かっている降圧剤(例:ニカルジピン)陽性対照
3血圧降下剤A調べたい薬

まず、グループ1に比べてグループ2の血圧が下がるように、実験の条件を整えます(実験が成立していることの確認)。その条件のもとで、グループ1に比べてグループ3の血圧が下がるかどうかを確かめます。

細胞の機能を指標にしたスクリーニングのように、偽陽性(本当は効いていないのに、効いたように見えること)が出やすい実験では、陽性対照と陰性対照は欠かせません。

陰性対照の種類(溶媒群・シャム群・プラセボ)

陰性対照には、いくつか種類があります。調べたい薬を溶かした液(溶媒)だけを与える溶媒群(ビークル群)。例えば、化合物をDMSOに溶かして加える実験では、DMSOだけを加えた群です。手術の後の変化を見るときに、同じ操作をするけれど、目的とする処置だけをしないシャム群。そして、プラセボ(有効成分を含まない偽薬)も、ノイズを切り離すための陰性対照の一つです。なお、ブラインド試験は、陰性対照ではなく、被験者や評価する人の思い込み(心理的な要因)によって、結果が偏らないようにするための手法です。

陰性対照というと、全く何も動かないイメージがあるかもしれませんが、正確には、見たい作用を含んでいるかもしれないけれど、目的とする薬によるものではない、だからノイズ、ということです。

陽性対照の選び方

やりたい実験がすでに論文で報告されていれば、できるだけ同じ陽性対照を使います。試薬のロット(製造番号)まで書いてあれば、同じものを購入して合わせることもあります。

論文がないときは、似た作用を持つ薬剤を使ったり、遺伝子操作で似た状況を作ったりします。それも難しいときは、陽性対照を置かずに、陰性対照を手厚くすることもあります。スクリーニング(たくさんの化合物から候補を探す実験)なら、動いたときのことだけを考える、という割り切り方もありますが、結果を確かめる検証試験では、陽性対照がないと厳しいですね。

陽性対照で作用が出なかったら、まず同じ実験をやり直し、次に条件を見直します。それでもだめなら、別の実験方法や測定方法を考えます。

新薬の開発では、陽性対照がない

新薬の開発では、事情が異なる場合があります。見つかったばかりの新規ターゲット(受容体、酵素)に作用する薬を探すにあたっては、陽性対照化合物が実質存在しません。例えば、受容体の働きを止める薬を探す場合、受容体を刺激する体内の物質(アゴニスト)はあっても、その働きを選択的に止める化合物は、まだないことがよくあります。アンチセンス(遺伝子の働きを抑える方法)などの手法を使わないと、陽性対照の代わりになるものがないこともあります。

この場合、陽性対照を置かずに、手当たり次第に活性がある化合物を探していくことになります(ランダムスクリーニング)。ランダムスクリーニングで活性が高いことが確認された化合物を、仮の陽性対照化合物とします。そして、この仮の陽性対照化合物を基準に、有機合成により様々な化合物を作り、活性を高めていきます(省略しますが、実際は、カウンターアッセイで化合物の特異性などを評価しなくてはいけません)。

そして、比較的活性が高い化合物について、病態モデル動物での評価を行い、化合物がポジティブな結果を示すことを示します。ここでも、陽性対照を置きにくいことがよくあります。既存の薬が効きにくい病気に、異なる仕組みで効く薬を狙う場合は、比べられる薬がないからです。

つまり、新薬の開発は、「新たな陽性対照化合物を作り出す」、と言い換えることが出来ます。