プログラフ(アステラス製薬、主成分タクロリムス)は、非常に強い効果を示す免疫抑制剤で、臓器移植での拒絶反応の抑制や、免疫機能の過剰な活性化によって起こる病気(自己免疫疾患)の治療に用いられます。主成分であるタクロリムスは、免疫機能の主役であるT細胞の機能を強く抑制することで、拒絶反応や炎症を止める効果を示します。
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プログラフの主成分であるタクロリムスは、藤沢薬品(現アステラス製薬)の研究者が、筑波山のふもとの土に生息する放線菌から発見しました。強い免疫抑制作用は衝撃的で、「FK506」という開発コードは、免疫学関連の製薬会社研究者の間では広く知られています。
プログラフは、最初は臓器移植時の拒絶反応の抑制を目的として開発されました。他人の臓器を移植する場合、移植される側の免疫細胞は、他人の臓器を外敵とみなして攻撃します。これを拒絶反応といい、そのままにしておくと移植された臓器は破壊されてしまいます。
タクロリムスは、免疫担当細胞であるT細胞が免疫反応を開始するためのスイッチである、カルシニューリンというタンパク質の作用を阻害します。FKBP(FK506 binding protein)という細胞内のタンパク質に結合したタクロリムスは、カルシニューリンの機能を止めてしまいます。
カルシニューリンは、免疫細胞を活性化させるサイトカインと呼ばれる物質をT細胞に産生させるためのスイッチです(サイトカイン産生をコントロールするNFATに対する「脱リン酸化反応」が、スイッチの役割を果たします)。タクロリムスはこのスイッチをオフにするので、免疫反応が起こらなくなるのです。そのため、臓器移植後にプログラフを投与すると拒絶反応の発症を抑制できます。
プログラフの強い免疫抑制作用は、拒絶反応以外の免疫異常の治療にも用いられます。関節リウマチやループス腎炎という病気は自己免疫疾患と総称され、免疫細胞が自分自身の臓器の細胞を攻撃することで起こります。そこで、免疫細胞の活性化を止めるプログラフは、自己免疫疾患の治療にも用いることができます。
プログラフの副作用としては、腎臓への障害が挙げられます。プログラフの血中濃度と腎障害の起こり方には関連性があるので、使用時には投与量のコントロールや、定期的な腎機能の検査が必要です。また、免疫機能を強く抑制することから、感染症が重篤化する可能性もあります。したがって、医師や薬剤師の指示を守って服用することが必要です。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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