メジコン(デキストロメトルファンン臭化水素酸塩水和物)とはどんな薬?

メジコン(塩野義製薬、主成分デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物)は、かぜや気管支炎でおこる咳を止めるためのせき止めです。咳は、体外の異物を検出した気管の神経が脳の咳中枢という部分を興奮させ、呼吸に関わる筋肉を収縮させて起こります。主成分のデキストロメトルファンは、咳中枢の活動を低下させて咳を出にくくします。メジコンは脳に作用することから、中枢性鎮咳薬と呼ばれています。

咳(せき)は、呼吸によって気道に入った異物を体外に排出するための生理反応です。異物は、気道表面の粘液に絡め取られ、咳によって取り除かれます。本来、咳は体を外敵から守るために必要な反応ですが、必要以上の咳は不眠などで体に負担をかけたり、日常生活にも悪影響を与えます。

気道が異物(を含む痰)を検出すると、神経を介して、脳の延髄にある咳中枢という部位に異物があることが伝わります。すると咳中枢が興奮して、呼吸に関与する筋肉(呼吸筋)を収縮させる命令を出します。こうして、咳が起こります。

メジコンの主成分であるデキストロメトルファンは、咳中枢の働きを低下させることで咳を止めます。咳中枢は、さまざまな生体内物質によってコントロールされていますが、デキストロメトルファンはグルタミン酸という神経伝達物質の作用を低下させる作用を持っています。

気道からの神経細胞が異物によって興奮すると、咳中枢でグルタミン酸を放出します。グルタミン酸は、咳中枢の神経細胞表面にあるNMDA受容体に結合して神経細胞を活性化させることで、咳中枢が興奮するのです。

デキストロメトルファンは、NMDA受容体に結合してグルタミン酸の効果を弱める作用を持ちます。そのため、メジコンを服用すると咳中枢が興奮しにくくなり、呼吸筋への命令が脳から出なくなるので咳が止まるのです。

メジコンのように脳の咳中枢の働きを低下させて咳を止める薬剤を中枢性鎮咳薬と呼びます。デキストロメトルファンは咳中枢以外の脳部位にも作用し、眠気などの副作用を起こします。メジコンを服用後は、車の運転などは避けることが望ましいです。一方、デキストロメトルファンは痛みを和らげる作用があるとも考えられており、鎮痛薬としての実用化に向けた研究開発も行われています。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


メジコン(臭化水素酸デキストロメトルファン)の構造式