メイアクト明治製菓、主成分セフジトレン ピボキシル)は、感染症の治療に用いられる抗生物質です。メイアクトは、ブドウ球菌や肺炎球菌、大腸菌をはじめとした、広い範囲の細菌に対して抗菌作用を持ちます。メイアクトは、これらの細菌が感染して生じる感染症、例えば気管支炎、扁桃炎、肺炎、中耳炎などの病気の治療に使われます。
抗生物質は、それぞれの薬に共通する構造を元にして、いろいろな系統に分類されています。メイアクトは、セフェム系と呼ばれている抗生物質です。メイアクトが属するセフェム系は、現在最もよく使われている抗生物質です。
セフェムというのは、メイアクトの構造式のなかにある、正方形と六角形がくっついた部分の構造の名前です。このセフェムと呼ばれる構造に、様々な部品をくっつけることで、抗菌作用をしめす細菌の種類を増やしたり、抗菌作用を強めたり、体内に吸収されやすくしたり(プロドラック化といいます)、薬剤耐性(細菌が抗生物質に対して抵抗性を持つこと)を防ぐことができます。
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メイアクトは、細菌の表面を形作る細胞壁という構造を合成する酵素(タンパク質)の働きを抑制します。メイアクトによって細胞壁が作れなくなった細菌は、細胞内の圧力と外の圧力の釣り合いを取ることができずに破裂して死んでしまいます。一方、ヒトの細胞には細胞壁がないので、メイアクトがヒトの細胞に悪さをすることはありません。
さて、メイアクトMSと言う名前を調べてみると、製造元の明治製菓の「明」や、MeijiSeikaの略号MS、にちなんで、メイアクトMSと命名されたそうです。明治製菓というと、チョコレート、カール、きのこの山、、、とにかくお菓子の会社のイメージが強いのですが、実は薬の世界でも有名な企業です。明治製菓の全売り上げの約35%が、薬品事業によるものだそうです。
明治製菓の薬というと、うがい薬のイソジン、のどの痛みに使うSPトローチ、うつ病の治療薬デプロメール(主成分マレイン酸フルボキサミン)など、聞き覚えがある薬が結構あるんですが、やはり一番の得意分野は、メイアクトに代表される抗生物質でしょう。
明治製菓は、日本で始めてペニシリンを製造、販売した会社です。ペニシリンにつづき、ストレプトマイシン、カナマイシン、ホスミシンなどの抗生物質をコンスタンに発売してきました。明治製菓が独自に研究開発した抗生物質も多く、メイアクトはその伝統の上にできあがった、非常に優秀な抗生物質です。
メイアクトには、小児用の細粒が用意されています。こどもは錠剤を飲むのが苦手なので、細かい粒にしてあげると飲みやすくなるのです。ただし、細かい粒にすると、どうしても薬の苦味が出てしまいます。そこで、メイアクトを飲みやすい味にするために、主成分のほかに、いろいろな香料などが入っています。
さて、メイアクト小児用は、どんな味をしているのでしょうか。雑誌(日経メディカル2007年5月号)の企画で、子供用の薬をソムリエが味見する、というのがありました。このなかには、メイアクト小児用も含まれていました。ソムリエが語るメイアクト小児用の味は、こんな感じ。「オレンジまたはマンゴーに似たトロピカル系の香り。苦みが後から出てくる。駄菓子の味がする。」うーん、トロピカル系ですか、子供には人気があるんでしょうか?駄菓子の味、というところにお菓子会社の薬っぽさが出てる、と感じるのはわたしだけ?
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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