カバサール(カベルゴリン)とはどんな薬?

カバサール(キッセイ薬品、主成分カベルゴリン)は、体内のドパミン受容体というタンパク質を活性化させる薬です。カバサールのような薬は、ドパミン作動薬と呼ばれています。

ドパミン受容体は、体内で作られるドパミンという物質によって活性化されて、神経系などの働きを調節しています。そのため、ドパミンの量が減ると、様々な症状が現れます。しかし、足りないドパミンを補充しようと口から飲んだりしても、ドパミンは体内ですぐ分解されてしまうので、効き目はありません。そこで、ドパミンの代わりとなる化合物の探索がおこなわれました。その結果、みつかった薬がカバサールです。

カバサールは、ドパミンと同様にドパミン受容体を活性化する作用を持っており、しかも、ドパミンと違って体内で分解されにくいという特徴をもっています。そのため、カバサールは、ドパミンの補充という目的にぴったりの薬ということになります。

カバサールは、もともとパーキンソン病という病気の治療薬として開発されました。パーキンソン病とは、脳の中にある黒質と呼ばれる部分の細胞が死んでしまうことで起こる病気です。黒質からはドパミンが分泌されていて、このドパミンは体の運動に関わる神経の働きを調節しています。パーキンソン病では、黒質からのドパミンの分泌がとまってしまうので、体の運動がうまくコントロールできなくなります。

そこで、カバサールの登場です。カバサールは、ドパミンと同じくドパミン受容体を活性化することができます。そのため、カバサールは不足したドパミンの働きを補う作用を示し、ドパミン不足によって起こるパーキンソン病の症状を抑えることができます。カバサールは、体内で分解されにくいので、1日1回の服用で十分という飲みやすい薬です。

一方、カバサールは、高プロラクチン血症とよばれる、産婦人科領域の病気の治療薬として用いられています。

プロラクチンとは、頭の中の脳下垂体という部分から分泌されるホルモンで、子供が生まれたときに、「母乳を作れ」という指令を伝えるためのホルモンです。また、プロラクチンが分泌されるとは、卵巣からの排卵が抑えられます。この現象は、子供が生まれた後、すぐ妊娠をしないようにするためだと考えられています。

ドパミンは、プロラクチンの分泌量を下げる働きを持っています。そこで、カバサールの登場です。カバサールは、ドパミン受容体を刺激して、ドパミンの働きを強める作用を示します。すると、プロラクチンの分泌量が下がり、卵巣からの排卵が、正常におこなわれることになり、排卵障害による不妊症が改善される、というわけです。

このように、カバサールは、いろんな用途に使われますが、用途によって飲む量が違います。カバサールの投与量は、パーキンソン病の場合は1日1回2?4mg、高プロラクチン血症では1週間に1回0.25?0.75mgと、ぜんぜん違います。「薬はさじ加減が大事」といいますが、カバサールは、さじ加減で使用法がガラッと変わる、典型的な薬ですね。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


カバサール(カベルゴリン)の構造式