ミニリンメルト(デスモプレシン酢酸塩水和物)とはどんな薬?

ミニリンメルト(フェリング・ファーマ、主成分 デスモプレシン酢酸塩水和物)は、夜尿症に対して効能を持つ薬です。夜尿症とは、簡単に言えばおねしょのこと。ミニリンメルトは、夜尿症の中でも、腎臓からの水の排泄が多く尿の比重や浸透圧が低くなっているタイプに効果を示します。

おねしょは、小さい子供にはごく普通に見られる現象です。多くの人にとっては、おねしょはある程度の年齢になれば自然と解消するものです。しかし、何らかの原因でおねしょが治らず、家庭生活でのストレスや社会生活への影響(例えば、学校での宿泊行事など)が大きくなると、夜尿症という病名がつけられ、医師による治療が必要になります。

ミニリンメルトは、尿として排泄される水の量を減らす作用を持ちます。尿の産生量が減ることで、寝ている間の尿もれが起こらなくなるのです。ミニリンメルトは、水なしで服用することができる口腔内崩壊錠というタイプの薬剤です。ミニリンメルトが口腔内崩壊錠となっているのは、寝る前に飲む水の量を増やさないようにするためです。ミニリンメルトと同じ作用を持つ薬剤で点鼻剤として使われているものもあります。

ミニリンメルトの主成分であるデスモプレシンは、もともと「中枢性尿崩症」という病気の治療に用いられていました。中枢性尿崩症とは、脳下垂体から分泌される「バゾプレッシン」というホルモンの作用が低下することで、大量の尿が生成される病気です。デスモプレシンは、バゾプレシンと同じ作用を持っているので、中枢性尿崩症に対して効果を示します。

腎臓において尿が生成されるときには、まず薄い尿を大量に作り、その後に水や体にとって必要な物質を再吸収して濃い尿にする、という仕組みになっています。バゾプレシンは、この過程の中で、水の再吸収を高める役目を持っています。

バゾプレッシンの作用が低下すると、水の再吸収がうまくいかなくなるので、大量の薄い尿が生成されます。これが尿崩症です。デスモプレシンは、バゾプレシンの作用を補助することで、水の再吸収をたかめて尿の量を減らすのです。夜尿症におけるミニリンメルトの働きは、尿崩症におけるデスモプレシンと同じ作用メカニズムとなっています。

夜尿症については、尿漏れが起こった時にアラームによって知らせることで排尿習慣をつける「夜尿アラーム」などの薬物以外の治療法も用いられています。ただ、夜尿アラームについては効果が出るのにある程度の期間がかかるのに対し、ミニリンメルトなどの薬剤では速やかに効果発現が見られます。状況に応じて、治療法の使い分けが行われているようですね。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


ミニリンメルト(デスモプレシン酢酸塩水和物)の構造式