ダイアモックス(アセタゾラミド)とはどんな薬?

ダイアモックス(三和化学研究所、主成分 アセタゾラミド)は、炭酸脱水酵素阻害剤と呼ばれる種類の薬です。炭酸脱水酵素とは、生体内の二酸化炭素や炭酸イオン、水素イオンの量を調節する化学反応を触媒する酵素です。ダイアモックスは、この炭酸脱水酵素の働きを強力に抑制する作用を持っています。

ダイアモックスは様々な病気に対して効能・効果が認められています(緑内障、てんかん、メニエール病、睡眠時無呼吸症候群など)。その中でも、ダイアモックスは緑内障の内服薬として用いられることが多いです。

緑内障は、網膜の上にある神経細胞が何らかの原因で死んでしまい、視神経の変化や視野の喪失が起こる病気です。緑内障で起こる神経細胞死は、現在の技術ではこれらの細胞を補充する手立てがありません。そのため、緑内障については、早期発見と早期の治療が必要になります。

緑内障の最も主要な原因と考えられているのは、眼圧(眼球を満たす液体である眼内液の圧力)の上昇です。眼内圧の上昇が、網膜の神経細胞に大きなダメージを与えるのです。それでは、眼圧上昇はなぜ起こるのでしょうか?

眼圧の上昇は、眼内液の供給と排出のバランスが崩れることで起こります。そして、ダイアモックスは、眼内液の供給を低くすることで、バランスの崩れを改善します。眼内液は、目の毛様体と呼ばれる部分から房水という液体が分泌することで供給され、隅角と呼ばれる部分から排出されます。眼内液の供給と排出のバランスがとれていれば、眼圧は一定に保たれます。しかし、何らかの原因でこのバランスが崩れ、眼内液が眼球内にたまってしまう状況がおこる(供給量が増えるとか排出量が減るとか)と、眼内に液体がどんどん押し込まれることになり、眼圧は上昇します。

炭酸脱水酵素は、房水の産生に大きく関与します。そのため、ダイアモックスで炭酸脱水酵素の作用をとめると房水の産生量は減ります。すると、房水の眼内への流入が減り、眼圧が低下するというわけです。

炭酸脱水酵素は、様々な組織に存在します(だからこそいろいろな病気の治療薬として使われます)。したがって、目以外の組織にダイアモックスが作用すると、これは副作用として認知されます。ダイアモックスで認められる副作用としては、吐き気や食欲不振、手足のしびれや尿の回数の増加があります。また、ダイアモックスでは、まれに重篤な副作用(代謝性アシドーシス、尿路結石、皮膚症状)も認められることから、長期間の投与には注意が必要です。

最近は、脱水素酵素阻害薬の点眼薬(目だけに効果を限定できる)も発売されており、ダイアモックスのような全身性の作用を持つ飲み薬を服用しなくてもよい状況になりつつあります。通常は、点眼薬での治療を行い、その効果が低い時にダイアモックスを追加して服用する、という使われ方がされています。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


ダイアモックス(アセタゾラミド)の構造式