ビソルボン(ブロムヘキシン塩酸塩) とはどんな薬?

ビソルボン(日本ベーリンガーインゲルハイム、主成分 ブロムヘキシン塩酸塩)は、急性気管支炎、慢性気管支炎などで痰が絡むときに用いられる去痰剤です。ビソルボンは、飲み薬だけでなく吸入液も用意されています。ビソルボン吸入液では、生理食塩水で薄め、ネブライザーという器具を使って気管の中に薬を直接吸入します。

痰は、気管支の表面を覆う粘膜から分泌される粘液でできています。痰の成分の中には、ムチンなどの糖タンパク質(タンパク質を構成するアミノ酸に糖鎖が結合したもの)が含まれます。痰がネバネバする原因の一つは、痰の中に含まれる糖タンパク質です。ネバネバした痰は、うまく体外に排泄することができません。

痰を排泄させやすくするためには、痰のネバネバを取るか、痰を体外に押し出すために気道機能を手助けすることが必要です。ビソルボンの主成分であるブロムヘキシンは、これらの目的にかなった薬理作用を持っています。

ブロムヘキシンは、インドの生薬アダトダ・ウァシカ(Adhatoda vasica)に含まれる有効成分をもとに、ドイツの製薬会社ベーリンガーインゲルハイム社の研究者が化学合成によって見出した化合物です。ブロムヘキシンは、痰の絡みを取る作用が強く、ビソルボンだけでなく、一般的な風邪薬(OTC薬)の中にも痰の絡みをとるための成分として含まれています。風邪薬のテレビCMで「ブロムヘキシン配合」などというフレーズを聞いたことがある人も多いと思います。

ブロムヘキシンは、痰の中の糖タンパク質を分解する作用があります。ブロムヘキシンは、痰を作っている気管支の細胞に働きかけ、細胞内のリゾチームという酵素タンパク質の働きを使い、糖タンパク質を分解します。この作用により、気道から分布される粘液のネバネバ感は弱くなり、サラサラとした痰となります。また、ブロムヘキシンには、気道からの粘液分布量を増やす働きがあります。つまり、ビソルボンを服用すると、気道の中にある痰が「水っぽくサラサラになる」ことになります。

さらに、ブロムヘキシンは、気道の繊毛(痰などの異物を体外に押し出すための気道表面にある小さな毛)の運動を活発にする作用を持っています。水っぽくサラサラした痰は、気管の中でひっかかかることなく、繊毛の働きによって体外にスムーズに押し出されるようになります。このようにして、ビソルボンを服用すると痰の絡みがとれるのです。

痰の絡みというのは、とてもしんどいものです。風邪などのときだけでなく、手術などで体力が落ちている時にも、痰がうまく体外に出せない場合があります。ビソルボンは、このような手術後の痰を切る場合にも使用されます。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


ビソルボン( ブロムヘキシン塩酸塩)の構造式