アコファイド(アコチアミド塩酸塩水和物)とはどんな薬?

アコファイド(ゼリア新薬工業、主成分 アコチアミド塩酸塩水和物)は、機能性ディスペプシアにおける胃もたれ、膨満感などの症状改善に用いられる薬です。

機能性ディスペプシアとは、胃や腸に目に見える異常がないにもかかわらず、長期間にわたって胃もたれ、膨満感、みぞおちの痛みなどを生じる症状のことです。アコファイドは、動きが悪い胃や腸の運動を改善させることで、胃もたれ、膨満感を改善する効果を示します。

胃もたれや膨満感を生じる原因の一つは、蠕動運動(消化管が口から肛門側へ食物を移動させる運動)の不調です。胃や腸の運動が低下すると、消化管の中を食物が動きにくくなり、不快な満腹感が消えなくなります。機能性ディスペプシアの患者でも、このような消化管運動の低下が生じていると考えられます。

消化管運動は、アセチルコリンという生体分子により調節されます。アセチルコリンは腸を支配する神経の末端から分泌され、消化管の平滑筋に作用して収縮させます。すると、消化管の蠕動運動が起こり、食物が消化管内を移動できるようになります。一方で、消化管にはアセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)も存在します。この酵素が働くと、アセチルコリンの量が低下し、消化管の運動は低下します。

アコファイドの主成分であるアコチアミドはアセチルコリンエステラーゼの働きを抑制し、消化管内でのアセチルコリンの分解を低下させます。すると、アセチルコリンの量が増えるため、消化管の蠕動運動が改善し、機能性ディスペプシアの症状も改善するのです。

胃もたれや膨満感は、多くの人に現れる症状で、アコファイドのような薬が必要な人は多いと思われます。しかし、国際的な診断基準によれば、機能性ディスペプシアとは、「6カ月以上前から症状があり、最近3ヵ月間はつらいと感じる食後のもたれ感、早期飽満感、心窩部痛及び心窩部灼熱感のうち1つ以上の症状があり、かつその原因となりそうな器質的疾患が確認されない」状態です。器質的疾患とは、胃潰瘍などのように臓器の組織に何らかの変化が起こり、内視鏡検査などの検査で異常が発見できる病気です。つまり、アコファイドを服用するには、まずは医師によって、器質的疾患でないことを確認し、症状が長期間持続することを確認する必要があります。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


アコファイド(アコチアミド塩酸塩水和物) の構造式