薬の名前の由来その1|ナウゼリン・デパケン・マクサルトほか
最終更新:
この記事では、ナウゼリン(ドンペリドン)、デパケン、マクサルトなど10の薬の名前の由来を、名前のつけ方の「型」に分けて、薬を作る側の目線で紹介します。薬の名前は、効き目をそのまま名乗る「効き目直球型」、掛詞で遊ぶ「掛詞型」、化学名から取る「化学名・社名型」など、案外わかりやすい型に分かれます。由来はいずれも、各社のインタビューフォームの記載にもとづきます。
効き目直球型:効き目をそのまま名乗る
この10薬では、いちばん多い型です。何の薬か、名前を聞けばわかります。
ナウゼリン(ドンペリドン)
消化管運動改善剤:協和キリン、主成分 ドンペリドン
強い制吐作用ももつことから、nausea(吐き気)と関連づけて命名されたそうです。「-リン」という語尾がつくと、薬っぽく聞こえます。
ちなみに、海外では同じドンペリドンが Motilium(モチリウム)という名前で売られています(ヤンセン社が開発)。日本だけナウゼリンという別の名前で、その理由は確認できていません。
参考記事:ナウゼリン(ドンペリドン)とはどんな薬?
もっと詳しく:「ナウゼリン」の名前の由来とは?(姉妹サイト「お薬の名前の由来」)
ストプニン
止瀉剤(下痢止め):杏林製薬、主成分 硫酸ベルベリン(2026年時点で販売状況は確認できず)
下痢を「ストップ」させるのでストプニンとしたそうです。直球勝負。効きそうな名前です。
もっと詳しく:「ストプニン」の名前の由来とは?(姉妹サイト「お薬の名前の由来」)
グッドミン
睡眠導入剤:田辺三菱製薬(現:田辺ファーマ)、主成分 ブロチゾラム(販売中止)
良好な睡眠から(good+睡眠)。ストレートですねぇ。
もっと詳しく:「グッドミン」の名前の由来とは?(姉妹サイト「お薬の名前の由来」)
アイケア
角結膜上皮障害治療用点眼剤:科研製薬、主成分 ヒアルロン酸ナトリウム
眼を意味するアイ(EYE)と看護を意味するケア(CARE)を組み合わせたものです。目薬とすぐ分かりますね。
もっと詳しく:「アイケア」の名前の由来とは?(姉妹サイト「お薬の名前の由来」)
セールスポイント型:薬の売りを名前に込める
ロメット
気管支喘息剤:三菱ウェルファーマ(現:田辺ファーマ)、主成分 レピリナスト(販売中止)
「ロング(long)なメリット」に由来します。薬の効き目が長く続くことから。薬が長く作用することは、確かにセールスポイントになります。
もっと詳しく:「ロメット」の名前の由来とは?(姉妹サイト「お薬の名前の由来」)
掛詞型:2つの意味を重ねる
インスミン
不眠症治療剤:杏林製薬、主成分 フルラゼパム(2026年時点で販売状況は確認できず)
良い睡眠(スイミン)に入れる(in)薬剤であり、不眠症(insomnia)治療薬なのでインスミンとしたそうです。in+スイミン と insomnia との掛詞は高度なテクニック。
もっと詳しく:「インスミン」の名前の由来とは?(姉妹サイト「お薬の名前の由来」)
化学名・社名型:化学名や社名から取る
デパケン
抗てんかん剤、躁病・躁状態治療剤、片頭痛治療剤:協和キリン、主成分 バルプロ酸ナトリウム
デパケンは、化学名の一つ Sodium dipropyl acetate の略号、DPA に由来します。徐放性のデパケンR錠の R は、Retard(徐放性)の頭文字です。DPAの略しかた無理ないか? なぜケン? 出っ歯のケンみたい。
もっと詳しく:「デパケン」の名前の由来とは?(姉妹サイト「お薬の名前の由来」)
タナドーパ
経口ドパミンプロドラッグ:田辺三菱製薬(現:田辺ファーマ)、主成分 ドカルパミン
田辺製薬(現:田辺ファーマ)が研究開発したドパミンプロドラッグであるためです。社名入りの薬も多いです。ちなみにプロドラッグとは、体内で別の形に変わってから効き目を示す薬のことです。
挑戦イメージ型:目標や思いを込める
マクサルト
5-HT1B/1D受容体作動型片頭痛治療剤:主成分 安息香酸リザトリプタン(2003年承認)
Max Altitude に由来します。飛行用語、登山用語で最高高度、最高到達点を示す言葉です。高い到達点への挑戦の意。チャレンジ精神あふれる名前です。でも頭痛薬にしては大げさ?
もっと詳しく:「マクサルト」の名前の由来とは?(姉妹サイト「お薬の名前の由来」)
逆説型:中身と逆に見える名前
ニコチネル
禁煙補助薬:主成分 ニコチン(1999年にノバルティスが発売)
Nicotine(ニコチン)と nell(null:なし)を組み合わせた名前で、「ニコチンがない」の意味だそうです。ニコチンが入っている薬なんですが、、、禁煙するときの「ニコチンがない状態」を楽にする薬、ということでしょうか。なお、貼り薬の「TTS」は Transdermal Therapeutic System(経皮治療システム)の略で、一般名称ではなく商標です。
もっと詳しく:「ニコチネル」の名前の由来とは?(姉妹サイト「お薬の名前の由来」)
コラム:一般名にも「型」がある
商品名は会社が考えますが、一般名(成分の名前)には決まりがあります。一般名の多くは、世界保健機関(WHO)が決める国際一般名(INN)にそろえて決められ、同じ仲間の成分には共通の語尾(ステム)がつきます。この記事の薬でも、リザトリプタン(マクサルト)の「-triptan」はセロトニン(5-HT1)受容体を刺激する片頭痛の薬の仲間、フルラゼパム(インスミン)の「-azepam」はジアゼパムの仲間(ベンゾジアゼピン系)です。レピリナスト(ロメット)の「-ast」は、抗ヒスタミン作用によらない抗アレルギー薬、ドカルパミン(タナドーパ)の「-opamine」はドパミンの仲間を表します。一般名の語尾を見ると、薬の仲間がわかるのです。
薬の名前は誰が決めるのか
最後に、名前の決まり方を少しだけ。私がいた会社では、昔は社内公募をしていました(今はやっていません)。臨床試験に入り、製品になる見通しが立ってきた段階で募集を始めていたと思います。全社から集まった候補のなかで、呼びやすく、意味がわかりやすい名前が採用されていた印象があります。最終的に決めるのは、薬を売る側(販売部門)です。研究者が名前を決めるわけではないんですね。
薬の名前には、医療安全のための決まりもあります。名前が似た薬の取り違えを防ぐため、2000年の厚生省(当時)の通知で、医療用医薬品の販売名に剤形や含量を入れることになりました(例:マクサルト錠10mg)。2004年の厚生労働省の通知では、新しく申請する薬の名前が、すでにある薬の名前に似ないよう、事前に調べることも求められています。呼びやすく覚えやすいだけでなく、ほかの薬と間違えにくいことも、今の薬の名前に欠かせない条件です。