メバロチン(プラバスタチン)とはどんな薬?

メバロチン(第一三共、主成分プラバスタチン)は、血中コレステロールが高い状態である高脂血症の治療薬で、生活習慣病の原因となる動脈硬化を防ぐために使用されます。主成分であるプラバスタチンは、コレステロールの生体内での合成を止める作用を持っています。

生体内のコレステロールは、何段階もの生化学反応によって合成されます。プラバスタチンは、合成反応の中で最も重要な役割を持つ酵素HMG-CoAレダクターゼの働きを強く抑制して、コレステロール合成を途中でストップさせます。その結果、血液中のコレステロール量が低下するのです。

メバロチンは、日本生まれ日本育ちの薬剤で、20世紀の日本発新薬の代表と言っても過言ではありません。三共の研究者が、コレステロール低下薬を目的とした研究開発を始めたのは1971年、日本の製薬会社での新薬開発が軌道に乗りだした時期でした。「カビ」好きな研究員が、数千種類のカビが作り出す生理活性物質の中から、コレステロール低下作用を持つ化合物の探索(スクリーニング)を始めました。

地道な2年間のスクリーニングの結果、研究チームは「コンパクチン」という化合物を発見しました。この化合物は、動物実験をクリアし、患者での有効性を確認する臨床試験までたどり着いたのですが、残念ながら発売されるまでには至りませんでした。

一方、海外の製薬企業であるメルクも、同時期にコレステロール低下薬の開発を始め、カビの産生物質からロバスタチンを発見しました。熾烈(しれつ)な新薬競争は、1987年にメルクがメバコール(主成分ロバスタチン)を発売したことで決着が付きました。しかし、三共の研究チームは、コンパクチンからの改良研究を続け、苦労の末に、1989年メバロチンの製品化にたどり着きました。

血中コレステロール低下作用が脳血管障害のリスクを減らす可能性があるという理由から、メバロチンは爆発的なヒットとなり、またたく間に日本での売上NO.1の薬となりました。現在では、プラバスタチンの特許が切れたため、多くの会社から後発品(ジェネリック医薬品)が発売されています。

一つの薬が生まれるには、10年以上の期間がかかり、成功を手にするのは容易ではありません。メルクとの競争に負けたとはいえ、コレステロール低下薬というコンセプトを世界で始めて掲げ、18年かけてメバロチンを世界的な薬に育て上げた三共の研究チームには頭が下がります。


メバロチン(プラバスタチン)の構造式