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ブロプレス(カンデサルタン シレキセチル)他

ブロプレス(武田薬品、主成分カンデサルタン シレキセチル、12 mg錠 216.2円)とニューロタン(主成分ロサルタンカリウム 50 mg錠 143.4円)は、いすれもACE阻害薬を超える理想的降圧剤といわれている、アンギオテンシン2受容体阻害薬です。ブロプレスは、これまでのACE(angiotensin converting enzymeアンギオテンシン変換酵素)阻害薬と異なるメカニズムで効果を示します。

 ACE阻害薬は、前回取り上げたようにアンギオテンシン産生を抑制する薬剤でした。しかし、ACE阻害薬は、咳がでるという副作用が認められ、問題となっていました。咳をする原因は以下の通りです。

 ACEはアンギオテンシンを産生する作用以外に、ブラジキニンというペプチドの分解にも関与します。ACEを阻害すると、ブラジキニン量が増えます。また、ブラジキニンには、咳を誘発する作用があります。以上のことから、ACE阻害薬では咳が副作用として必然的に現れます。そこで作用メカニズムが異なる薬剤の開発が行われました。

 アンギオテンシン2はアンギオテンシン受容体と呼ばれるタンパク質に結合して、降圧作用を示します。そこでアンギオテンシン2とアンギオテンシン受容体の結合を阻害する薬剤は、ACE阻害薬と同様の降圧作用を持ち、咳などの副作用を持たないと考えられました。以後、アンギオテンシン受容体阻害薬の開発競争になり、ブロプレスやニューロタンが出てくるのですが、これはまた後編で。

(後編)
前編ではアンギオテンシンII受容体阻害薬の優れている点について書きました。この理屈に基づき、低分子アンギオテンシンII受容体阻害薬を最初に発見したのは、武田薬品でした。

 武田薬品の研究者はCV−2973という化合物がアンギオテンシンII受容体の作用を阻害することを発見しました。CV−2973は、高血圧患者に対する臨床試験まで進みましたが、患者での降圧作用が弱かったために、臨床試験でドロップ (中止)しました。

 一方、CV−2973が発表されると、CV−2973をもとに、各製薬会社は一斉に類似化合物の合成&スクリーニングを開始しました。武田の特許にあったCV-2961という化合物をもとに、デュポンがDuP 753という化合物を発見しました。これがニューロタン(ロサルタン)です。これを知った武田は、後続品の開発に着手し、10ヶ月で、ニューロタンより薬効が強い化合物CV-11974を発見、これを改良して、より体内に吸収されやすいブロプレス(TCV-116,カンデサルタン シレキセチル)を生み出しました。

 CV-11974の体内に入りにくい原因であるカルボン酸をエステルにしたのがブロプレスです。ブロプレスは、エステルなので、腸から血液中に入りやすくなっています。そしてブロプレスは、血液に入るとすぐエステラーゼというタンパクで分解されCV-11974となり作用を示します。ブロプレスのような、体内で分解され活性化する薬をプロドラックといいます。

 現在では、様々な会社がアンギオテンシン2受容体阻害薬を開発していますが、先発組のブロプレス、ニューロタン、が勝ち組となってます。これからブロプレスなどの長期使用による循環器系の保護作用なども示されていくと思います。ニューロタン、ブロプレスのどちらも良い薬なんですが、私個人としてはニューロタンの方が好き(名前がかわいいから)。

(番外編)
朝日新聞夕刊に『ブロプレス』が慢性心不全治療に有効』との記事が掲載されていました。ブロプレスのひと世代前のACE阻害薬(『カプトリル』参照)については、これまで慢性心不全についての有効性が長期臨床試験で確認されていたので、納得の結果です。ブロプレスは血圧降下薬として開発されたため、心不全については臨床試験段階であり、やっと長期臨床試験の結果が出たのです。

 慢性心不全とは何らかの原因で心臓の収縮力が低下し、長期にわたり循環機能が低下する状態で、最終的に死に至ります。慢性心不全の究極の治療法は心臓移植であり、薬物による治療は難しいとされてきました。しかし、ACE阻害薬が、慢性心不全の状態を改善することが、臨床試験で報告されました。ブロプレスは、ACE阻害薬とほぼ同じメカニズムで、心臓の負荷を下げ、心筋細胞を保護して、心不全状態を改善することが動物試験で確認されているため、臨床試験を行うこととなったのです。

 慢性心不全の臨床試験は、厳しい試験です。薬剤の効き目を証明するために、薬剤を投与する人、または偽薬(プラセボ;外見は同じでも、効果を示さないくすり)を投与する人を、本人にはわからないように振り分け、患者さんの死亡までの期間(存命期間)を調べ、存命期間が延長するかしないかで結果を判断します。ある薬(ACE阻害薬とはメカニズムが異なる薬剤)の心不全に対する臨床試験では、薬剤を投与した患者の存命期間が偽薬を投与した患者より短くなると言う衝撃的な結果が出たこともあります。動物レベルでは改善が認められるのに人では逆になることがあり、どのような結果が出るか最後まで分かりません。

 ブロプレスは、このような過酷な試験にたえ、存命期間を延長することが示されました。今後の心不全治療方針に大きな影響を与えると考えられます。日本では、現在心不全における適応に対し申請中とのこと。早く、承認されてほしいと思います。

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