ポラキス(塩酸オキシブチニン)とはどんな薬?

ポラキス(サノフィ、主成分塩酸オキシブチニン)は、頻尿(排尿回数が多くなる症状)に対する治療薬です。主成分であるオキシブチニンは、膀胱の筋肉を緩めて尿をためる能力を高めることで、トイレに行く回数を減らせます。

ポラキスは『QOL改善薬(生活改善薬)』と呼ばれる種類に分類される薬剤です。QOLとは、Quality Of Life の略で、日本語で『生活の質』を意味します。OQOL改善薬は「生きるか死ぬかという状態ではないが、日常生活に不便な状態をもたらす病気を改善する薬」であり、『生活をより快適にする』ために使用されます。ポラキスのような頻尿治療薬以外に、バイアグラのような性機能改善薬、発毛薬、しわ除去薬などの薬剤もQOL改善薬です。

頻尿とは、トイレに行きおしっこをする回数が増える状態で、高齢者に多く見られます。尿の回数が増える以外に、生命に関わるような症状に進行することはありません。とは言うものの、ひどい場合には真夜中に何度も何度もトイレに立つようになり、睡眠不足による作業効率の低下や、暗い中での転倒による骨折など、生活の質が明確に低下します。私も、ある薬剤の副作用で頻尿を経験しました。夜中に1時間に1回の割合でトイレに立ちました。このときは、日常生活がものすごく苦痛だったことが印象に残ってます。社会生活に支障が出る場合には、病院に行き治療を受けることになります。

多くの頻尿患者さんでは、膀胱に少ししか尿がたまっていなくても筋肉(平滑筋)が収縮しておしっこを体外へ排出しようとします。そこで、平滑筋を緩めて尿をためる能力を高めて排尿をさせにくくしようというアイデアが生まれました。現在の頻尿治療薬の多くは、このコンセプトに基づいています。

排尿の命令は、自律神経から分泌される生体内物質「アセチルコリン」により伝達されます。アセチルコリンは、膀胱平滑筋にあるムスカリン受容体というタンパク質に結合して活性化させる結果、筋肉を収縮させます。

ポラキスの主成分であるオキシブチニンは、ムスカリン受容体に結合し、アセチルコリンと受容体との結合を邪魔する「抗コリン薬」と呼ばれる化合物です。排尿の命令が伝わらず膀胱の収縮を止まるので、頻尿を起こりにくくなります。

一方で、ポラキスには特徴的な副作用が認められます。アセチルコリンはムスカリン受容体を介して唾液の分泌を増加させるので、オキシブチニンのような抗コリン薬を服薬すると、つばが出なくなり口が渇くのです(口渇)。

口の渇きは、QOLを低下させます。私も、薬剤による口渇の経験があります。薬を服用すすると、舌の表面が乾き、口の中がすごく苦くなり、お茶を飲んでも渋みがいつまでも残って気持ち悪くなります。また、1時間に何回も水を飲まないと仕事に集中できず、水筒が必需品となります。

QOL改善薬が生活の質を低下させるのでは、意味がありません。各製薬会社は、口渇が起こりにくい頻尿治療薬の開発に着手し、熾烈な争いが展開されました。QOL改善薬の新薬開発は、軽い副作用も許されず困難を極めます。その結果うまれた改良版抗コリン薬がトルテロジンやソリフェナシンという薬剤なのです。


ポラキス(塩酸オキシブチニン)の構造式