ラジカット(エダラボン)とはどんな薬?

ラジカット(田辺三菱製薬、主成分エダラボン)は、十分な酸素や栄養が行き渡らなくなった神経細胞へのダメージを減らし、日常生活における機能障害を防ぐための薬です。例えば、脳の血管が詰まって起こる脳梗塞では、発症後出来るだけ早く(24時間以内)ラジカットを静脈内投与することで、神経細胞の障害を抑制して運動機能を改善します。また、運動神経が進行性に死んでいき体が動かせなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)に対しても、神経細胞を保護して症状の進行を遅らせる効果を示します。

ラジカットの主成分であるエダラボンは、神経細胞障害の原因であるラジカルという物質を取り除く「ラジカルスカベンジャー」と呼ぼれる物質です。ラジカルは、非常に攻撃力が強い分子で、いろいろな生体内分子と反応します。

ラジカットの適用疾患である脳梗塞では、ラジカルは梗塞部位(血管が詰まった場所)の周りで発生し、細胞膜の主成分である脂質と反応して神経細胞の細胞膜を破壊します。すると、脳梗塞による酸素不足でただでさえ弱っている神経細胞は、細胞膜をやられて簡単に死んでしまいます。

エダラボンは、脂質の代わりにラジカルと反応して、ラジカルを消してしまいます。そのため、神経細胞へのダメージが弱まり、脳梗塞後の神経死を抑制することで、身体機能の悪化を防ぎます。

ラジカットという商品名は、「ラジカル」と「カット」を合成した単語、「ラジカル」を「カット」して消失させるという意味を持っています。ラジカルスカベンジャーの性質そのものを表しており、ラジカットの作用メカニズムをすぐイメージできる優れた命名だと思います。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


ラジカット(エダラボン)の構造式