アダラート(ニフェジピン)とはどんな薬?

アダラート(バイエル薬品、主成分ニフェジピン)は高血圧や狭心症の治療に使われる薬剤です。これらの病気は、いずれも血管が収縮して血液が流れにくくなることが原因で起こります。アダラートの有効成分であるニフェジピンは、血管の筋肉(平滑筋)の収縮の引き金であるカルシウムイオンの効果を弱めて、血管を拡張させ、血圧を下げたり狭心症の症状を改善します。

アダラートの主成分であるニフェジピンは、血管の筋肉(血管平滑筋)にあるカルシウムチャネルの働きを止める作用を持ち、カルシウム拮抗薬と呼ばれます(他のカルシウム拮抗薬の例としては、ノルバスク(アムロジピンベシル酸塩)が挙げられます)。血管平滑筋の収縮は、細胞膜にあるカルシウムチャネル(イオンの通り道となるトンネル)から細胞内に流入したカルシウムイオンが、筋肉を収縮システムのスイッチを入れることで起こります。アダラートを服用すると、カルシウムイオンが細胞内に入れなくなるので血管平滑筋の収縮が起こらず、血管が拡張します。

ニフェジピンは体内に速やかに吸収されるので、血管拡張作用も速やかに起こります。狭心症では速やかに心臓の血管を拡張させる必要があるので、アダラートの服用が適しています。

アダラートは古くから使われている薬剤で、比較的安全性が高くて使いやすい薬です。ただし、服用にあたり注意すべきことがあります。それは、「グレープフルーツジュースと同時に服用しない」という点です。

「食い合わせ」といえば、一緒に食べてはいけないとされる食べ物の組み合わせのことです。例えば、「梅干しとうなぎ」「天ぷらとすいか」などが古くから言い伝えられています。食べ物の食い合わせが本当かどうかはわかりませんが、薬の世界でも、一緒に飲んではいけない薬と飲み物の組み合わせがあり、こちらの「飲み合わせ」は科学的根拠に基づいたものです。

アダラートをグレープフルーツジュースで服用すると効き目が強くなり、血圧が下がリすぎることが知られています。血圧が急激に下がると、立ちくらみやひどい時には失神を起こし、非常に危険です。添付文書にも、「グレープフルーツジュースとの同時服用をしないように注意すること」という記載があります。


なぜグレープフルーツとアダラートの組み合わせで、薬の作用が強くなるのでしょうか?

グレープフルーツジュースに含まれるフラノクマリン類と呼ばれる化合物群は、アダラートの主成分であるニフェジピンを無毒化するタンパク質「薬物代謝酵素」の働きを止めます。一般にCYP(シップ)とよばれる薬物代謝酵素は、ニフェジピンの構造を変化させ、生理活性をなくします(この働きを「薬物代謝」といいます)。つまり、グレープフルーツジュースを飲むと、ニフェジピンが分解されにくくなって体内の量が増加し、通常より血圧降下作用が強くなるということです。

大学生のとき、ゼミの文献紹介で、先輩が論文紹介をしたのですが、その論文がアダラートの「飲み合わせ」を紹介したものでした。その時は論文の重要性がよくわからなかったのですが、会社に入ってやっとわかりました。アダラートとグループフルーツ薬のような「飲み合わせ」を調べることは、製薬会社が再重要視する項目の一つです。グレープフルーツジュースに限らず、CYPの働きを抑制する化合物は、アダラートの効果を増強します。このような「薬の飲み合わせ」によって起こる作用を「薬物相互作用」と言います。

1990年代後半になると、いろいろな種類の薬物代謝酵素に対する薬の作用を評価できるようになりました。さまざまな薬の薬物相互作用の多くがCYPによるものとわかったため、製薬会社は新薬を開発するときには必ずCYP阻害作用を調べ、出来るだけ薬物相互作用が起こりにくい化合物を選ぶようになりました。アダラートと似た構造のアムロジピン(商品名ノルバスク)にはCYP阻害作用がなく、より薬物相互作用が起きにくくなっています。

普段飲んでいる薬に新しい薬が追加して処方されるとき、処方された薬に薬物相互作用がないか、薬剤師さんが確認してくれるはずです。また、予期せぬ副作用を防ぐために、薬剤師の指示に従って薬を飲むことが大切です。


アダラート(ニフェジピン)の構造式