エルシトニン | 病院でもらった薬の値段TOP
エルシトニン
(エルカトニン)


 前回の「エポジン」(エリスロポエチン)では、人工の低分子合成化合物の代わりに、体内に存在するタンパク(ペプチド)を薬に用いる場合があることを紹介しました。
今回は、エリスロポエチン同様、体内に存在するペプチドを薬として用いる例として、「エルシトニン」(旭化成ファーマ、主成分エルカトニン、薬価 注20S 20エルカトニン単位1mL 1078円)を紹介します。

 エルカトニンは、ヒトのペプチドではなく、ある動物のカルシトニンと呼ばれるペプチドのことです。さて、どんな動物のペプチドなのでしょうか?

 その前に、カルシトニンについての説明です。カルシトニンは、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)という病気の治療に用いられます。骨粗鬆症は、お年寄りに多い病気で、一言で言うと骨がもろくなり(専門用語で言うと、骨密度が低下して)、骨折やそれに伴う痛みを生じる病気です。私の祖母はもう90になりますが、骨粗鬆症のせいか、これまで何度も手足を骨折しています(幸い祖母は完治して元気にしております)。骨粗鬆症による高齢者の骨折(特に大腿骨)は寝たきりになる大きな原因であるため、骨粗鬆症治療薬が望まれています。

 骨粗鬆症は、簡単に言うと骨の産生と消失のバランスが崩れた状態です。大人の骨は一見成長が止まっているように見えますが、実はそうではありません。骨は常に作られており(骨芽細胞による骨形成)かつ壊されています(破骨細胞による骨吸収)。骨は生体内のカルシウムの貯蔵庫であり、骨形成ではカルシウムが骨へ取り込まれ、逆に骨吸収ではカルシウムが骨から血液に溶け出していきます。

 これらの作用はカルシトニンを始めとする様々なホルモン(女性ホルモンなど)やビタミンDによりコントロールされています。高齢になると(特に女性)このコントロールが乱れ、骨吸収が亢進した状態になります。骨吸収が亢進することで骨密度の減少、骨の強度の減少が起こります。これが骨粗鬆症です。

 カルシトニンおよびエルカトニンは、破骨細胞の働きを抑え骨吸収を抑制する作用を持っています。そのため、エルカトニン製剤であるエルシトニンは、骨吸収を抑制して相対的に骨形成を亢進させることで骨を丈夫にする作用が期待されました。

 骨粗鬆症患者に対する長期間投与の臨床試験が行われ、エルシトニンによる骨密度の増加が確認されました。ただしエルシトニン発売後行われた臨床試験では、骨粗鬆症による骨折発生の頻度を減少させる所までは示せず、その作用は予想より弱いものでした(この臨床試験については、実験プロトコール自体の問題があったとされています)。この点、骨粗鬆症治療薬としては物足りないものがあります。幸いカルシトニン、エルカトニンには中枢神経に作用して痛みを抑える作用もあり、骨粗鬆症時の痛みを抑制することが分かりました。現在では、この作用を期待してエルシトニンが使われるようになっています(というか保険適応が、「骨粗鬆症による疼痛」とされてしまった)。

 で、冒頭のクイズの答え。エルカトニンは、ウナギのカルシトニンの構造を少々かえ、効きやすくしたものです。様々な動物のカルシトニンが調べられた結果、ウナギのカルシトニンが、ヒトのカルシトニンよりも骨に対する活性が数十倍強いことがわかり、薬になったそうです。開発過程では、カルシトニン精製のため大量のウナギが使われ、研究員は蒲焼きを山のように食べたとか(旭化成ファーマのホームページより)。うらやましい話です。


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