エルシトニン(カルシトニン)とはどんな薬?

エルシトニン(旭化成ファーマ、主成分エルカトニン)は、お年寄りに多く見られる骨粗鬆症でおこる痛みの治療に使われる薬剤です。骨粗鬆症は、お年寄りに多い病気で、一言で言うと骨がもろくなり(専門用語で言うと、骨密度が低下して)、骨折や痛みを生じる病気です。主成分のエルカトニンは、痛み伝達を調節する神経に働きかけ、骨粗鬆症でおこる疼痛を緩和する効果を示します。

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)骨の産生と消失のバランスが崩れた状態で、骨が消失する速度が相対的に早くなるために骨がもろくなり、その結果骨折が起こりやすくなります。骨量を調整する女性ホルモンの機能が低下している高齢の女性に多く発症します。

大人の骨は一見成長が止まっているように見えますが、実はそうではありません。常に作られており(骨芽細胞による骨形成)かつ壊されているのです(破骨細胞による骨吸収)。骨は生体内のカルシウムの貯蔵庫で、骨形成ではカルシウムが骨へ取り込まれ、逆に骨吸収ではカルシウムが骨から血液に溶け出します。

骨形成と骨吸収のバランスは、女性ホルモン、ビタミンDなどによりコントロールされていますが、高齢になるとコントロール力が弱くなり、骨吸収が亢進した状態になり、骨密度の減少や骨強度の低下が起こります。これが骨粗鬆症です。

エルシトニンの有効成分であるエルカトニンは、破骨細胞の働きを抑え骨吸収を抑制する作用を持っているため、骨吸収を抑制することで相対的に骨形成を亢進し、骨密度を増やして骨を丈夫にする作用が期待されました。骨粗鬆症患者に対する長期間投与の臨床試験が行われ、エルカトニンによる骨密度の増加が確認されました。しかし、骨折の発生頻度を低下させる効果までは得られず、骨折のリスクを減らせるという当初の予想とは異なる結果となりました(この臨床試験については、実験プロトコール自体の問題があったとされています)。

たしかに、エルシトニンは骨折リスクを減らすことが証明できておらず、骨粗鬆症治療薬としては物足りないとも言えます。しかし、エルカトニンのもう一つの作用として、中枢神経に作用して骨粗鬆症時の痛みを抑える作用があることが分かりました。現在では、この作用を期待してエルシトニンが使われるようになっています。保険適応も「骨粗鬆症による疼痛」です。

エルカトニンはカルシトニンと呼ばれるペプチド(小さなタンパク質)の仲間で、ウナギのカルシトニンの構造を少々変えて効きやすくしたものです。さまざまな動物のカルシトニンが調べられた結果、ウナギではヒトよりも骨に対する活性が数十倍強いことがわかり、薬になったそうです。開発過程では、カルシトニンを精製して取り出すため大量のウナギが使われ、研究員は蒲焼きを山のように食べたとか(旭化成ファーマのホームページより)。うらやましい話です。