ケナログ軟膏口腔用(トリアムシノロンアセトニド)とはどんな薬?

ケナログ軟膏口腔用(ブリストル・マイヤーズスクイブ、主成分トリアムシノロンアセトニド)は、口内炎、舌炎、歯肉炎という口の中の炎症の治療薬で、口の粘膜に直接塗るタイプの軟膏剤です。主成分のトリアムシノロンは合成副腎皮質ホルモン(一般にはステロイドと呼ばれます)に分類される化合物で、炎症を起こす免疫細胞や生体内物質の働きを止めて強い抗炎症作用を示します。日本では昭和40年から使われている歴史ある薬剤です。

ケナログの主成分であるトリアムシノロンは、合成副腎皮質ステロイド(以下ステロイド)の一種です。トリアムシノロンは細胞の中に入り、グルコステロイド受容体というタンパク質に結合します。薬剤が結合した受容体は、細胞核で遺伝子(炎症関連タンパク質の産生)をコントロールするスイッチをオフにします。つまり、ケナログは炎症を起こすタンパク質の合成を遺伝子レベルで止めることになるので、非常に強い抗炎症作用を示します。

ステロイドは飲み薬でも使用できますが、口内炎のような口の中の炎症に対しては、ケナログ軟膏(なんこう)のような直接塗り込む薬剤のほうが便利です。口内炎の痛みは非常に強く、ひどい場合には飲み食いするときにも影響が出るため、手っ取り早く治療できる薬剤が望まれます。ケナログは、そのようなニーズに合った薬剤です。

ケナログ軟膏口腔用は、ゼラチンやセルロース、ポリエチレンなどを混合したゼリー状のもの(これを基材といいます)に、トリアムシノロンアセトニドを練り込んだ薬剤です。ゼラチンとポリエチレンを混合することで、通常の軟膏に比べてねばねばの度合いを高くしている(ゲルといいます)ので、軟膏を口の中に塗り付ければ簡単に張り付きます。あとは、薬剤が炎症を起こしている粘膜に染み込んで効果を示すというわけです。

ステロイドはさまざまな遺伝子の発現をコントロールするので、飲み薬の場合には糖尿病や骨粗鬆症などの全身性の副作用が現れることがあります。ケナログ軟膏口腔用の場合は、口の粘膜局所に塗りこむだけなので、大量のステロイドが血液によって全身に行き渡ることはなく、全身性の副作用について不安になる必要はありません。ただし、口の中の免疫機能を抑制する可能性はあるので、感染症がある場合は避けたほうが無難です(医師や薬剤師の指示に従ってください)。

季節の変わり目やハードワークが続くときなど、体にストレスがかかる時には口内炎が起きやすくなります。ケナログがあれば口内炎も怖くない、といいたいところですが、ストレスをためこまず、ビタミンを含んだ食事を取って予防するのがベストです。


ケナログ(トリアムシノロンアセトニド)の構造式