アデホス(興和、興和創薬、主成分アデノシン3リン酸2ナトリウム)は、眼精疲労による目の疲れ、メニエール病や内耳障害によるめまい、心不全(心機能が低下した状態)、頭の外傷後におこる神経障害などの治療に用いられる薬剤です。有効成分であるアデノシン3リン酸(ATP)は、細胞活動のエネルギー源であるとともに、血管拡張作用による栄養補給などのさまざまなメカニズムで様々な症状を改善します。
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アデホスの適応症であるさまざまな症状は、目の筋肉や神経、心臓などの細胞活動が低下した結果起こると考えられます。アデホスは、これらの細胞に「元気」を与え、機能を高めて症状を改善すると考えられています。アデホスの細胞に元気を与える方法には、大きく分けて「血管拡張作用」と「代謝促進作用」の2つに分けられます。
眼精疲労や神経細胞の機能が低下する時には、目の筋肉や神経の血管が狭くなって血流が悪くなり、栄養分や酸素の供給が滞ったり、老廃物がうまく排出されなかったりすることがあります。こうなると、細胞は十分なパフォーマンスを発揮できません。
アデホスの主成分であるATPは、血管の筋肉(血管平滑筋)のプリン受容体というタンパク質に結合し、活性化させることで血管平滑筋を緩めて血管を拡張させます。すると、細胞の十分な栄養・酸素が供給され発生した老廃物も速やかになくなるので、細胞はストレスなく機能を発揮できます。
ATPは、体内のエネルギー源として用いられ「エネルギー通貨」とも呼ばれます。エネルギーの塊であるATPを細胞に供給すると、細胞のさまざまな機能は円滑に行われ活性化することが期待されます。これを代謝促進作用とよんでいます。
炭水化物も、脂肪も、様々な酵素反応の結果として最終的にはATPとしてエネルギーを供給します。ATPは、アデノシン2リン酸(ADP)にリン酸が結合して合成されますが、このときリン酸結合の中にエネルギーが蓄えられます。蓄えられたエネルギーは、ATPのリン酸結合が切れてADPにもどるときに放出されます。
細胞に栄養がうまく供給されないと、細胞は余分なATPを消費してエネルギーのやりくりをしますが、それでは足りなくなると細胞機能が低下します。アデホスは、このような状態を改善します。
広告の生物の授業では、エネルギー源としての役割のみが語られることが多いのですが、実際の生体内では他にも多くの作用・役割を持っています。アデホスは、その役割をうまく使っている薬剤だと思います。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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