コレステロール低下薬の大御所メバロチン。特許切れによる後発品の登場やライバルのリピトールの躍進で,ちょっと元気がなかったんですが,昨年末(注:2005年末),久々にメバロチンの良い話題が出てきました。
リピトールの項で、「血中コレステロール値が高ければ,動脈硬化がおこる。動脈硬化の人は心筋梗塞や脳梗塞がおきやすい。よってコレステロール値を低下させるリピトールのような薬があれば心筋梗塞や脳梗塞の発生を抑制できる。」という仮説を証明するには,多人数,長期間の臨床試験が必要であると紹介しました。
そんな折、2005年年末にメバロチンの長期臨床試験の結果がリピトールに先んじて発表されました。そして,メバロチンについて上記の仮説を支持する結果が得られました。
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「MEGA Study」と銘打たれたメバロチンの長期長期臨床試験の概要は,以下のとおりです。
方法:1)対象となる患者は,高コレステロール血病患者,40~70歳の日本人男女合わせて約8000人、2) 1)の患者には,食事療法で治療を行なう、3) 1)の患者を「食事療法のみを行うグループ」と「食事療法に加えメバロチンの投与を行なうグループ」の2グループに均等に振り分ける。 4) 各グループとも平均5年以上の治療を行なう。5)「食事療法のみを行うグループ」と「食事療法に加えメバロチンの投与を行なうグループ」について、以下の項目について差があるかどうかを検討する。
○ 心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患の発生率, 脳梗塞,脳卒中,の発生率や総死亡率など
結果:「食事療法に加えメバロチンの投与を行うグループ」は,「食事療法のみを行なうグループ」に比べ、1) 心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患の発症率が33%抑制された。2) 冠動脈疾患に脳梗塞を加えた,動脈硬化由来の疾患の発症率が30%抑制された。3) 副作用などの有害事象発生率に差はなかった。
この試験結果から、 「メバロチンが,日本人においてコレステロール値を低下させるリピトールのような薬があれば心筋梗塞や脳梗塞の発生を抑制できる」ことが示唆されました。また、長期服用時のメバロチンの安全性も示されました。
日本で使われているコレステロール低下剤の中で,動脈硬化による心筋梗塞や脳血管障害の発生率を下げることが示されたのは、メバロチンが初めて。このメバロチンの試験結果は,非常に重要なものです。
抗コレステロールの患者さんにメバロチンを投与するための理由が,データとして明確に示せるようになったわけです。つまり、医者が患者さんに薬物の選択理由をはっきりと示せるようになり,メバロチンを第一選択薬として使用する(売り上げアップ)ことが予想できます。そのほかのコレステロール低下剤は,メバロチンがきかなかったときの予備的な位置づけに甘んじるかもしれません。
今後,メバロチンやリピトールの売り上げがどのように変化するか。メバロチンの逆襲が見られるか。見ものです。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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