ミオナール(塩酸エペリゾン)とはどんな薬?

ミオナール(エーザイ,主成分塩酸エペリゾン)は,ひどい肩こりや腰痛のときの筋肉のこり(筋緊張状態)を和らげるために用いられる薬です。また、脳梗塞やけがの後遺症のときに筋肉が固くなり動かせなくなる状態(痙性麻痺)の治療薬でもあります。主成分のエペリゾンは,中枢神経の働きを抑えることで,肩や腰の緊張した筋肉を緩める効果を示すことから、中枢性筋弛緩剤と呼ばれます。

肩こりや腰痛のときには、筋肉が硬くなって(筋緊張)血管の太さが狭くなるので、筋肉に血液が流れにくくなります。すると、筋肉内に老廃物がたまって筋肉に痛みを感じる原因となります。

ミオナールは,筋肉の緊張をほぐす作用と血管を広げて血流量をふやす作用を併せ持っています。筋肉の痛みの主要な2つの原因を同時に取り除くことで,筋肉の痛みを和らげることができるのです。

全身の筋肉は、脳からの命令に従って収縮します。ミオナールの有効成分であるエペリゾンは,命令の通行路である脊髄の運動神経(運動ニューロン)に働きかけ、中枢神経からの筋収縮の信号を弱めることで,筋肉を弛緩させるのです。

ミオナールは直接中枢に働きかけ強い筋弛緩作用を示すので、脳血管障害の後遺症などで固くなった筋肉の痙縮を治療するためにも用いられます。一方で、手足の筋肉を弛緩させる強力な効果は、脱力感,ふらつきなどの副作用の原因ともなります。

また、ミオナールは血管の筋肉(平滑筋)に直接働きかけ、筋肉を緩める作用を持つことが、マグヌス法という方法で確認されています。血管平滑筋が緩むと、血管が拡張して血流が改善します。

ミオナールがどのような標的分子を介して作用するかについては,実はあまり良くわかっていません。エペリゾンが、脊髄神経と運動神経をつなぐシナプスという部分で働くことは,動物実験で明らかになっています。しかし,シナプスの中のどの分子(たとえば神経伝達物質の受容体,酵素)に作用しているのかはよくわかっていません。

薬の中には,「薬効を示すけれども,薬剤の標的分子が良くわかっていない」ものが多くあり、ミオナールもそのひとつです。標的分子がわかれば,より優れた副作用の少ない薬剤ができると考えられます。また,運動ニューロンの機能についても新しい知見が得られるでしょう。これからの研究に期待したいものです。


ミオナール(塩酸エペリゾン)の構造式