リュープリン(酢酸リュープロレリン)とはどんな薬?

リュープリン(武田薬品工業、主成分酢酸リュープロレリン)は、性ホルモンの過剰な働きによって引き起こされる前立腺がんや閉経後乳がん、子宮内膜症などの治療に用いられる薬剤です。主成分のリュープロレリンは、男性ホルモンや女性ホルモンの産生を強力に止めることで、抗がん作用や子宮内膜の増殖抑制作用を示します。リュープリンには薬剤を持続的に放出できるマイクロカプセル技術が用いられており、1回の注射で4週間以上効果が持続します。

リュープリンの主成分であるリュープロレリンは、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)の作用をより強力にしたホルモン剤(スーパーLH-RHアゴニスト)です。LH-RHは、脳下垂体から黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンを分泌させ、これらのホルモンを介して卵巣からは女性ホルモンを、精巣からは男性ホルモンを産生させます。

リュープロレリンは強力なLH-RH作用を持っていて、最初は黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンをどんどん分泌させますが、やがて脳下垂体は疲れてしまいホルモン分泌を止めてしまいます。その結果、これらのホルモンによって作られる男性ホルモンや女性ホルモンが産生されなくなるのです。

リュープリンの作用は強力で、男性ホルモンや女性ホルモンの合成はほぼ止まり、卵巣や精巣を摘出(去勢といいます)するのとほぼ同じ効果が得られます。前立腺がんや閉経後乳がん、子宮内膜症などは、性ホルモンによって細胞が異常に増殖する病気なので、リュープリンによって性ホルモンをほぼゼロにすることで、強力な治療効果が得られます。


リュープリンが優れている点は、薬効の強さに加え、薬剤の使いやすさにもあります。「リュープリンSR注射用キット22.5」という注射剤だと、24週間に1回の投与で、前立腺がんや乳がんの治療が可能です。投与量により、4週間に1回から24週に1回まで投与間隔を選べます。

リュープロレリンはペプチド(分子量が小さいタンパク質)であり、消化管で分解されるので飲み薬にすることはできません。したがって、注射剤として投与することになります。

リュープロレリンの作用メカニズム(持続的に脳下垂体を刺激して疲れさせる)を考えると、薬剤の効果を出すためには、長時間にわたり一定量の薬剤が存在するようにしなければいけません。普通の注射剤でこれを実現するには、毎日何度も注射する必要がありますが、患者さんにとっても医師にとっても、これは手間がかかり使いづらいものです。

そこで、持続時間が非常に長い注射剤を作れないか、というコンセプトのもとで開発されたのが、長期間にわたり薬剤を徐々に放出できる「徐放性製剤」です。リュープリン注射液には、直径が約100分の1mmのマイクロカプセルが入っています。このマイクロカプセルでは、乳酸・グリコール酸混合物とリュープロレリンが緩く結合しています。

リュープリンを皮下投与すると、乳酸・グリコール酸混合物とリュープロレリンとの結合は弱いので、マイクロカプセルは徐々に溶け始め、溶けた部分から薬剤が外れて血液中にリュープロレリンが放出されます。マイクロカプセルの溶ける速度は一定なので、体内の薬剤量も一定に保たれます。

リュープリンに限らず、他の薬剤でも徐放性製剤が用いられるようになっておいます。特に、統合失調症治療薬では患者さんに確実に薬を服用してもらうために、徐放性注射剤が用いられるようになっています。