グラン(フィルグラスチム)とはどんな薬?

グラン(協和発酵キリン,主成分フィルグラスチム(遺伝子組換え))は、白血球の一種である好中球の数を増やすために用いられる薬です。がんの化学療法や再生不良性貧血では、骨髄(骨の中にある血液細胞の産生部位)の機能が低下して血液細胞の産生が低下します。微生物を攻撃する役割をもつ好中球が減ると、免疫機能が低下して感染症が悪化しやすくなり危険です。グランの主成分であるフィルグラスチムは、骨髄での好中球産生を増やしたり、骨髄でできた好中球を血液に出やすくして、好中球の数を増やします。

生体に微生物などの外敵が侵入すると、白血球の一種である好中球が感染部位に集まり攻撃をして排除します。好中球は、骨の中にある骨髄という組織にいる好中球前駆細胞が成熟することで作られます。

しかし、がんの化学療法や再生不良性貧血などでは骨髄の機能が低下して、好中球の産生能力が低下します。好中球の寿命は数日程度と短いので、放置しておくと好中球の数はどんどん減っていきます。すると、外敵に対する免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなったり重症化しやすくなります。したがって、このような状態になった場合は、グランのような薬剤を投与して、できるだけ早く好中球の数を増やす必要があります。

グランの主成分であるフィルグラスチムは,G-CSF(ヒト顆粒球コロニー形成刺激因子)と呼ばれるタンパク質で、好中球の数を増やす効果を持っています。フィルグラスチムは、好中球前駆細胞や好中球の表面にあるG-CSF受容体というタンパク質に結合し、STAT3という転写因子(DNA遺伝情報からのタンパク質合成のスイッチとなる分子)を活性化させて、さまざまな生理作用を起こします。

例えば、フィルグラスチムが好中球前駆細胞に作用すると、好中球への成熟が促進されます。また、成熟した好中球に作用すると、骨髄から血液中への好中球の移動を促進します。グランを投与すると、これらの作用が組み合わさって好中球の数が増えるのです。

フィルグラスチムはヒトが作り出すG-CSFと全く同じタンパク質です。ヒトG-CSFの遺伝子を組み入れた大腸菌を大量培養して、ヒトに投与できる量の大量のタンパク質を得ています。このようにして生産されたタンパク質を遺伝子組み換えタンパク質と呼びます。

遺伝子組み換えタンパク質を用いたグランのような薬剤をバイオ医薬品とよんでいます。バイオ医薬品は、遺伝子組み換え技術の代表的な応用例といえますが、問題点もあります。

バイオ医薬品は、大量培養した細胞からタンパク質を取り出すために大規模な施設が必要となり、有機合成によって作られる医薬品と比べて製造コストが非常に高くなります。これは薬の値段が高額になることを意味しており、社会的な問題になっています。バイオ医薬品の生産技術は進歩していますが、コスト面での改善はなかなか難しいようです。


グラン(フィルグラスチム)の構造式