ボルタレンサポ(ノバルティスファーマ、主成分ジクロフェナクナトリウム)は、関節リウマチや変形性関節症の関節痛や手術後の痛み、他の解熱鎮痛薬が効かない風邪の高熱の治療に用いられる解熱鎮痛薬です。主成分であるジクロフェナクは、炎症や発熱の原因となるプロスタグランジンという生体内物質の合成を止めて解熱鎮痛効果を示します。ボルタレンサポは肛門に挿入して使用する座薬であり、薬剤が速やかに吸収されるので即効性の効果が得られ、飲み薬が使いにくい患者さん(子供など)でも服用できます。
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ボルタレンの主成分であるジクロフェナクは,炎症や発熱の原因となるプロスタグランジンという物質を産生する酵素タンパク質シクロオキシゲナーゼの働きを低下させ,炎症反応を弱め体温を低下させます。ジクロフェナクのように、シクロオキシゲナーゼの活性を抑制する薬剤はCOX阻害剤(COXはシクロオキシゲナーゼ cyclooxygenaseの略称です)とも呼ばれます。
ジクロフェナクを主成分とする薬剤としては、飲み薬であるボルタレン(錠剤)に加え座薬であるボルタレンサポがあります。「サポ」は、「座薬」を意味する英単語「suppository」に由来しています。座薬は肛門から差し込んで服用する薬剤で、ボルタレンサポの場合、ジクロフェナクがグリセリン脂肪酸エステルに練り込まれています。グリセリン脂肪酸エステルが体温により直腸内で溶けることでジクロフェナクが放出され、直腸粘膜から吸収されます。
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ボルタレンに座薬が用意されている理由は、大きく分けて2つあります。
肛門から投与されるボルタレンサポでは、座薬に含まれるジクロフェナクが、直腸粘膜から血液に直接吸収されるので、薬剤が速やかに全身に運ばれ、即効性の効果が得られます。一方、ボルタレン(飲み薬)では,ジクロフェナクが全身に運ばれるには、口から飲んだ錠剤が腸から吸収されなくてはならず、座薬に比べて薬剤の効果が出るのに時間がかかります。痛みや高熱は、できるだけはやくやわらげたい症状であり、ボルタレンサポのような座薬は患者さんのニーズにあった薬剤といえます。
ジクロフェナクは手術後の炎症や痛み、発熱の治療に用いられますが、手術直後の患者さんは口から薬を飲みにくいことが多く、ボルタレンの飲み薬はなかなか使用できません。しかし、ボルタレンサポであれば,このような場合でも簡単に薬剤を投与できます。
また,小児で起こる高熱でも、薬剤を口から服用させるのはなかなか難しい(飲み込めない、服用自体を嫌がる)ので、ボルタレンサポのような座薬が利用されます。ただし,小児へのジクロフェナク投与では低体温ショックなどの副作用のリスクがあることから、アセトアミノフェンなどの異なる成分を含む座薬(例:アンヒバ)が使われることも多いです。
また、ボルタレンには坐剤の他にも、塗り薬(ボルタレンゲル、ボルタレンローション)や貼り薬(ボルタレンテープ)が用意されています。これは、速やかな効果発現に加え、副作用を起こりにくくすることを狙っています。
プロスタグランジンには胃粘膜の保護作用があり、ジクロフェナクのようなCOX阻害剤を服用すると、胃でのプロスタグランジン産生が低下します。その結果、胃粘膜の保護作用が弱まって、副作用である胃炎や胃潰瘍が生じます。この副作用は、痛みや炎症を起こす部位に薬剤を塗ったり貼ったりして、胃に薬が届きにくくすれば、弱めることができます。つまり、塗り薬や貼り薬とすることで、早い効果と副作用の減少の両方のメリットが期待できるのです。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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