タキソール| 病院でもらった薬の値段TOP

タキソール
(パクリタキセル)
タキソール(ブリストル・マイヤーズ、主成分 パクリタキセル、薬価 30mg注射液 1瓶 = 10264円)は、卵巣がん,肺がん,乳がん,胃がん、などの治療に用いられる抗がん剤です。タキソールは、1966年、多くの天然物質のなかから抗がん作用を持つ物質として発見されました。タキソールが見つかったのは、太平洋イチイ(学名Taxus brevifolia)という木の皮からでした。

タキソールは、非常に高い抗がん活性を持っていたため、すぐに抗がん剤としての開発がはじまりました。しかし、タキソールの開発には大きな問題点がありました。タキソールは、太平洋イチイの木の皮から見つかったのですが、この木の皮の中には、ほんのわずかしかタキソールが含まれていなかったのです。実際。実験に用いるタキソールを得るために、樹齢200年近い木の何本分かの木の皮が必要だったと言われています。

つまり、たとえタキソールが良い薬でも、ヒトに投与できるだけの量を自然界から得るのは不可能だというのが、最大の問題点だったのです。

ではどうやって手に入れるか。
1)人間の手でタキソールを有機合成してみよう
タキソールの構造はすごく複雑なので、人間の手で一から合成する方法をみつけるのには長い時間がかかりました。そして、多くの有機化学者の奮闘の結果。どうにかタキソールの合成法が見つかりました。しかし、タキソールを合成するには、複雑な反応を何十回も行わねばならず、そのため、合成によって得られるタキソールの量はやはり少なくなってしまいました。

2)ちょっとだけ自然の力を借りよう
では自然の力を借りよう、ということで、次にタキソールに似た化合物を自然界から探し、それを原料にしてタキソールを合成しようと言う方針が立てられました。そして、イチイの仲間の植物の成分を丹念に調べていった結果、ヨーロッパイチイ(学名 Taxus baccata)の葉や小枝から、10-デアセチルバッカチンIIIという化合物を見つかりました。この10-デアセチルバッカチンIIIを原料にすることで、タキソールを作るための反応の数は少なくすることができました。そして、10-デアセチルバッカチンIIIのよいところは、葉から得られるということです。タキソールを得る場合は、木の皮をむかなければいけないので、木が枯れてしまします。しかし、10-デアセチルバッカチンIIIは葉に含まれています。葉は、どれだけとっても、また生えてきますから、何回でも同じイチイの木から手に入れることができます。

(これだけ苦労して得られたタキソールですが、いまではヨーロッパイチイの培養細胞のなかでタキソールを合成させ、そこから取り出すことができるようになったそうです)

ということで、タキソールは2)の方法で手に入れることができるようになり、ようやくヒトへの臨床試験が行われました。そして、ヒトでも抗がん作用を示すことが示されたため、1992年、アメリカとカナダでタキソールという名前で発売され、現在では日本でも使われています。

自然の中には薬のタネになる化合物がたくさん存在します。人間が、何十年もかけてやっと作り出す化合物を、自然は細胞の中であっという間に作ってしまうのです。自然の力はやっぱりすごいです。

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タキソール(パクリタキセル)の構造式
タキソール(パクリタキセル)の構造式

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