ムコダイン| 病院でもらった薬の値段Part2


ムコダイン
(L-カルボシステイン)
ムコダイン(杏林製薬、主成分 L-カルボシステイン、薬価 250mg 錠 = 9.3円)は、痰をきるための薬(去痰薬)です。ムコダインは、風邪や喘息、気管支炎のときに痰を出やすくするために使われます。また、ムコダインは、蓄膿症(慢性副鼻腔炎)のときのハナ(膿)を出やすくするのにも使われています。

ムコダインの名前のムコは、粘液(Mucous)を表しており、ダインは、動く(Dynamic;ダイナミック)を表しています。つまり、ムコダインは呼吸器系の痰や膿などの粘液を流れやすくする作用を持つ薬です。

ムコダインの粘液に対する作用メカニズムを知るために、まずは、呼吸器系での粘液の働きを見てみましょう。

呼吸器系は、呼吸するために空気を通す役目をしてますが、これはすなわち空気の中の微生物やゴミなどが体内に侵入する経路となっている、ということです。そのため、呼吸器には、微生物やゴミをトラップするための仕組みがあります。それが、ムコダインのターゲット、粘液です。

例えば、気管には、粘液を産生する細胞がたくさんあります。細胞から分泌された粘液は、気管の表面(粘膜)を覆っています、粘液は、文字通り粘り気がある液体なので、空気中の微生物やゴミをくっつけることが出来ます。はえ取り紙みたいな感じでしょうか。

で、気管の表面には、細かい毛(線毛)が生えていて、この毛が口の方へとなびく運動をしています。粘液にくっついた微生物やゴミは、粘液にトラップされたまま、線毛の運動によって、口の方へ運ばれます。これが痰のもとになります。

風邪を引いたり、喘息の症状があると、この粘液の量が増えたり、粘液の質がより粘っこくなったりします。そのため、痰による、のどの違和感が起こることになります。ムコダインは、痰を流れやすく、出やすくすることで、この違和感をなくすわけですね。

さて、痰がからむのは、粘液が粘っこいからなのですが、では、なんで粘液は粘っこいのか。これが、ムコダインが痰を出やすくするメカニズムのヒントになっています。

痰、すなわち粘液は、ムコタンパクとよばれるタンパク質が主成分となっており、粘液の粘っこさは、このムコタンパクの性質によっています。ムコタンパクとは、タンパク質の周りに大量の糖鎖(お砂糖のなかまの分子がずらずらとつながっている、いわば砂糖のヒモ)がくっついている構造をしています。

ムコタンパクは、タンパク質と糖鎖が絡みあってるために、ネバネバとした粘りを生じるのですが、ムコタンパクの構造にはある特徴があり、これがムコタンパクの粘っこさを決める原因になっています。その特徴とは、ムコタンパクの中にある硫黄原子同士の結合(ジスルフィド結合)です。

ムコタンパクは、アミノ酸が鎖のようにつながって出来ています。そのアミノ酸の中にシステインというアミノ酸があります。システインは、硫黄原子をもっており、ムコタンパクの別の部分にあるシステインの硫黄原子と結合する性質があります。これがジスルフィド結合です。この結合は強い結合なので、タンパク質の形を決める骨組みとしての働きを持っています。この骨組みが、ムコタンパクの粘っこさの秘密です。

さて、ここで、ムコダインの登場です。ムコダインは、システインと似た構造をしているので、システインの代わりにジスルフィド結合に入り込み、ムコタンパク内のジスルフィド結合を切ってしまいます。ムコダインによって、ムコタンパクのジスルフィド結合が切れると、ムコタンパクの骨組みが崩れてしまいます。すると、ムコタンパクの粘っこさがなくなる、すなわち痰の粘っこさがなくなることになり、痰を出しやすくすることが出来るのです。

炎症による粘液は、気管だけでなく、蓄膿症や中耳炎などの膿(うみ)でも生じます。ムコダインは、このような膿の粘っこさもなくすことができます。

ムコダイン、小さい分子ですが、タンパク質をぶった切るなんて、結構大胆なことをする薬ですね。

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ムコダイン(L-カルボシステイン)の構造式

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